内容説明
映画音楽の勉強のため四国から上京してきた修文。幽霊が出ると噂される風月荘704号室を舞台に、「音楽」という夢の船に乗り合わせた人が奏る、切なくも美しい、著者最後の青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みかん🍊
92
大学を中退し父の工務店で働いていた修文は映画音楽の勉強したいと上京し音楽の専門学校に通う、紹介された防音ピアノ付きの部屋には幽霊が出るという噂があり、現代を明治の文体で描いた青春小説、幽霊の正体や周りの人々の証言などミステリの要素もあり面白くもあるがやはり明治文体は読みにくく津原さんとはいえエンタメというより文学小説だった。津村さんの遺作でもあり最後の小説、ご冥福をお祈りします。2023/11/13
yumiha
45
ん⁉幽霊が出る部屋?これは苦手なめっちゃ怖いホラー系津原泰水作品か?と身構えながら昼間読書にした。でも読み進めると、どちらかと言えば青春ものだった。夢に近づくために音楽系専門学校で学ぼうと上京した修文が不思議な存在感。若いのに冷静で悟っていて、名誉欲とか出世欲とかじぇんじぇんなくて、むしろ老成したようなタイプで、感覚的に自分の音を地味に追究する。修文の周り人物たちの方が熱い。それぞれの夢を抱いた若者たちが寄り集まってくる東京という大海原が一番の曲者なのかもしれない。2024/03/01
rosetta
38
★★★✮☆津原さんの遺作。現代の青春小説を明治時代の文体で描くと言う試みらしいが多少リーダビリティが良くない位で特に違和感は無い。これが旧仮名遣いとか古い字体とかだったりしたら感じたかも知れないが。高校卒業後父親の会社で働き、自分で貯めた金で新居浜から東京の音楽専門学校に来た秋野修文。学校に紹介された部屋にはグランドピアノがあり、元の住民の女性の幽霊が出る。幽霊の謎を追ったりバンド組んだり女の子と付き合ったり。如何にもありそうな、そしてまた逆に何処かお伽噺めいた物語が、修文の性格も相まって淡々と進む2023/11/18
ぽてち
31
2022年2月に亡くなった津原さんの遺作。という情報だけで借りたので、ページを開いて唖然とした。なんじゃこりゃあ! 文体が硬い。見たこともない漢字が使われている。ぼくの読んだ津原さんの本は『ヒッキーヒッキーシェイク』だけなので、この落差に戸惑った。気を取り直して続きを読む。大学に入学したものの音楽の夢を捨てきれず中退。金を貯めるために父親の工務店で働き、東京の専門学校に入った秋野修文を主人公とした青春小説だ。現代を舞台に明治の文体で書くというのは面白い試みだと思った。旧仮名遣い版もありだな。合掌。2024/02/07
えも
29
昨年度に逝去された津原泰水氏の最後の長編小説。音楽を学ぼうと愛媛から東京に出てきた専門学校生が都会の暮らしに翻弄され、父親が倒れたためまた愛媛に戻る。漱石の三四郎の如く、明治の文体を身にまとった甘酸っぱい青春小説に堪能し、そしてもう津原さんの新作は出ないんだと寂しく思う。2023/12/11