ナチ 本の略奪

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ナチ 本の略奪

  • ISBN:9784336063212

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内容説明

ナチが略奪したのは美術品だけではなかった。世界を思想的にも制覇しようという彼らの野望にとって、厖大な量の本や資料を略奪し、それを用いて「敵」を研究し尽くすことが、不可欠な手段だった。
ナチは「野蛮な知の破壊者」ではなかった。「敵」を知るために厖大な本や資料を読み尽くし、それを利用し歪曲して、ナチの視点から世界史を書き換えるという壮大な目論みが、本の略奪の動機だった。
戦争末期の混乱のなかでナチが略奪した大量の本は失われ、叢書やコレクションは四散した。戦後ソ連に運ばれたまま戻らぬ本も多い。ドイツの多くの図書館は、失われた叢書を補填すべく、出所を確かめぬまま略奪本を受け入れた。今世紀になり、そのような略奪本を洗い出し、もとの所有者やその子孫に返還する運動が進行中である。 
著者はヨーロッパ各地を訪れ、本の略奪、蔵書の消滅や四散、そして返還の現在を、新資料とともに検証している。
スウェーデン「Foundation Bengt Jansons Memorial Fund Prize 2018」受賞作品。

「このような歴史は、今なおわれわれを驚愕させる。研究者たちが新たな問題を掘り起こし、新たな手がかりを辿ると、初めて明るみに出る事実が今なお存在する」(シカゴ・トリビューン紙)
「思想史、探偵小説、略奪本返還運動の記録が渾然一体となったこの本は、読者の興味をかきたてずにはおかない」(ロサンジェルス・レビュー・オブ・ブックス)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

takeapple

15
ナチスドイツが行った本焚から、ナチスは反知性主義の代表のように思っていたが、全然違うのだなあ。本の虫というか本=言葉の力によって世界を解釈して支配しようとしていたのだ。そこは大日本帝国との大きな違いなのではないか。その中で行われたユダヤ人をはじめとする敵対勢力への本の掠奪と支配、その後戦争で失われてしまい四散してしまう貴重な本。連合軍の勝利は奪われた本の解放にはならないというのがまた恐ろしい。それにしてもユダヤ人への仕打ちの酷さは、本という媒介がある分リアルで残酷だ。人類の宝である本、大事に読みたい。2020/05/02

パトラッシュ

6
ナチによる美術品略奪は広く知られているが、1933年5月10日の焚書が強烈だったため書物を排斥する政権とみられていた。しかしユダヤ人を強制収容所で焼きながらその蔵書を没収し、反ユダヤ研究の基礎資料にしていたとは本書で初めて知った。大戦中に欧州で億を超える本が奪われて図書館が崩壊し、傷つけられたり焼かれたあげく所有者に戻らず朽ち果てるとは愛書家には胸をかきむしられる事実だ。電子書籍が一般化しつつあるが、やはり紙の本を読みたいと痛切に思った。ページをめくり文字を追うという知的営為こそ人の文化の歩みなのだから。2019/08/27

パン太郎

4
読書という行為、本の存在が実はどれほど尊いものか。「読書によってわれわれは人間になる。本が奪われるのは、思考を奪われるのと同じ事です。もっとも大事なものを奪う事で、ナチはユダヤ人を滅ぼそうとした」。手にとった方は、ぜひ訳者後書きまで読んでいただきたい。(全ての本ではないにしろ)一冊の本を生み出すことは、命を賭すのに値する仕事なのだと。この本が日本語になったからこそ、私は読むことができたし、こうして感想を書いている。感謝しかない。2019/11/05

ろびん

3
うーん、センチメンタルな気分に浸りたい訳ではなかったんですが。2019/10/20

ihatov1001

1
ナチスによって略奪されたユダヤ人の本にまつわる良書です。焚書だったり、ユダヤ人殲滅の研究のためだったりと様々な理由で本が奪われ続けました。そしてその四散した本の末路も様々で、奇跡的に生き残った本を元の持ち主に返すというプログラムが現代においても続行中なのが興味深いです。 2021/07/23

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