内容説明
女流文学界の最高峰、賀茂斎院に出仕し、都に名の通った女流歌人である斎院中将。13歳で藤原教通と結婚し、ひたすらに子を産むことを求められ命を削った藤原公任の娘。天皇を寝とるという野望に挑むべく宮仕えを決めた、美貌と才能と度胸をもつ藤原隆家の孫娘、元子女王。三者三様の生き様を紫式部の娘・賢子は冷静に見極めて、己の道を決めていく。平安の世を必死に生きる女達の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りー
19
この作者さんの平安3部作、読むのは3冊目。短編集で、道長の黄金時代から少し後を描いたお話が多い。主人公はそれぞれ、斎院中将、藤原教通、隆家の孫娘=元子女王、そして大弐三位こと紫式部の娘=賢子。産むも産まぬも選択次第の少子化時代にはホラーのような話だが、多くの女性が背負ってきた苦悩として読んだ。特にぞっとしたのは、藤原教通の妻が13歳で結婚してから子を産む道具として使い潰され、25歳で7人の子を遺し、白髪の老婆のようになって死んでいくシーン。うぇーとは思ったけれど、平安好きには推せる本です。2024/05/20
宇宙猫
15
★★★ 会話に古語を使う一方、カタカナや!を使ったりで統一されておらず読み難い。統一した言葉遣いで感情などを書き分ける能力がないのかな。タイトルもいかにも大河便乗で、各章に取って付けたような賢子感想がわざとらしくて無い方が良かった。最後の賢子の物語が面白かったので、それで通したら良かったのにな。2024/09/04
花林糖
14
面白かったです。『紫式部の一人娘』とあるが賢子が全ての話の主人公ではなく、斎院中将の君、藤原教通、元子女王(藤原隆家の孫=架空人物)、大弐三位(賢子)、の其々の物語(賢子は其々と少し絡み有)。紫式部の娘という肩書を乗り越え大弐三位になるまでの賢子の苦悩と賢さが凄い。二人目の夫は太宰大弐にまで出世。教通の妻は13歳で結婚し25歳で亡くなるまで7人の子を産み最後は衰弱死で哀し過ぎます。中将の君と紫式部のやり取りが◎。(六条院に侍りける女房/弐の次の妻/三界に家無くとも/位極めんと欲すれば)2024/06/01
ときわ
12
読んだことがない作家さんでしかも表紙が魅力的でないので買うかどうか迷った。言葉遣いに癖があり馴染むのに時間がかかったが、文庫で分厚くて読みでがあるのでそのうち慣れた。私は紫式部の娘・賢子のことは、親の七光りから苦労して脱し本人そのものを認めさせた頑張りやさんくらいに思っていたが。なんかすごいわ。母よりずっとしたたかに、かなりの努力と苦労で彼女の階級としては最高まで上り詰めた人。岐路に立つたびにここで間違えたら終わりと覚悟して選び抜く。必死で幸せをつかみ取る様子にのめりこんで読んだ。すごく面白かった。2024/03/01
ときわ
10
再読。初読の時は変わった言葉遣い、題名だと主人公は紫式部の娘だろうに違う人ばかりが主になる連作短編集で戸惑う事が多かった。でも再読してみると、それぞれの人のことを娘が知ってどう生きるかを思い悩む糧にしたことがはっきりと見えてきた。憧れたあの人のような生き方は出来ない。一見恵まれた姫君でも、使いつぶされてしまうこともある。自分の人生を主体的に生きるためにどうするのが一番良いのか。最後の選択を私は知っているのに、やっぱり「頑張れ!」と思いながら読んで感動した。2024/06/30