内容説明
『ギフテッド』『トラディション』著者が描く、『源氏物語』を題材とした歌舞伎町文学の新境地。
三浦瑠麗氏推薦「与えたい女、奪う男――「多情」の心の裡がみごとに綴られている。」
婚約者との結婚を控え、何の不自由もなく暮らしていた紫。あるダンサーとの過ちを機に、高校時代に惹かれた柿本先生に手紙を出すことに。そこで綴られるのは、幾度となく先生が話してくれた『源氏物語』のことだったーー。
私はどれか一人の女ではない、また私と同じ店で働いてきた四十も五十もいる女たちがそれぞれいずれかの女性像に似ているのではないのです。お客が次々に女を変えて、多様な女たちが彼の夜の生活を彩るわけではない、私たちは一人であるのです。
【目次】
■一の手紙 浅茅が露にかかるささがに
■二の手紙 山の端の心も知らで行く月は
■三の手紙 波路へだつる夜の衣を
■四の手紙 嘆きわび空に乱るるわが魂を
■五の手紙 今はかひなき恨みだにせじ
■六の手紙 風に乱るゝ萩の上露
■七の手紙 草の原をば問はじとや思ふ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rosetta
27
★★✭☆☆初読みで知らんかったけど芥川賞候補に2回なっている。大して悪いという訳ではない家に育ちながら継母との折り合いが悪く高校を中退して歌舞伎町で働く女性が書く7つの手紙からなる。それぞれのエピグラフが源氏物語からの引用で、それなりに内容を踏まえているのかもしれないが自分は(雨夜の)品定めくらいしか分からなかった。もっと源氏を知っていたら楽しめた?キャバ嬢として生きてきてパイロットの夫を捕まえたらまあ勝ち組であろうが、男を手玉にとって表も裏も知っているはずなのに自分はダンサーに本気でハマっているのが草2024/04/26
たっきー
14
源氏物語を題材とした物語。水商売をしていた紫がこれまでに思いを寄せた相手に手紙を綴る形で物語が進む。前作の『トラディション』があんまり面白く感じられなかったけれど、今作の方が好みだった。個人的に帯の三浦瑠麗コメントは気に入らない(使ってほしくない)。2024/03/20
てつろう
10
鈴木さんは2作目。あまり好きではない、源氏物語にインスパイアしたようだが、相変わらず歌舞伎町物語に少しタイトルと思いをつなげたようで、女性のしたたかさ、特に夜の歌舞伎町界隈での女性の2面性と怖さを感じた。そうでなけれは生き難いのだろう。2024/03/18
mitubatigril
9
初読みの作家さんで 作品の紹介に源氏物語のオマージュとあり図書館から借りました。手に届いた頃は源氏物語のオマージュと言う事をしっかり忘れていて読み始めて 源氏に関係してないか?疑問に思いながら読了。 夜の店のお店で働いていた女性が過去の男性たちに手紙に託し過去の思い出を問いかけ現状を報告する 相手によって共通の出来事が白と黒の表現がそうやって生きて行ったんだろうと思わせる内容ににやけてしまう。2024/03/03
まるよし
8
手紙を一方的に送る形でストーリが進む。周囲を描写し、主人公が浮き彫りになるよう。生き方にあまり共感はできないが、人間の恋愛など1000-2000年前から大して変わっていないはず。歌舞伎町でのやりとり、お客の掴み方は作者ならでは。実体験がないので見聞きするに限るが、本当に東京はこんなところなのか。2024/03/20