内容説明
フランス革命以降、「政教分離」を推進する近代国家の登場で、ローマ教皇は領土や権威を失っていく。20世紀に入り、教皇はイタリア政治に介入し続け、ムッソリーニの思惑もあり、バチカン市国が成立する。その後バチカンは、「反宗教」の共産主義を常に敵視。ナチスに秋波を送り、戦後は米国に接近、「人権外交」を繰り広げ、それは「東欧革命」に繋がった。本書は、カトリック総本山バチカンの生き残りを賭けた200年を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
54
ローマ教皇の下で独自の影響力を持つバチカンの近現代史がいかにヨーロッパの歴史と関わってきたかがわかる本である。世界中に12億人の信者を擁するカトリック信徒の影響力は一見非力に見えるが、粘り強い交渉によってナチスや共産主義との妥協をしながら自分たちの主張を巧みに受け入れさせてきた。ただフランシスコ教皇が中国共産党と妥協したり、ウクライナ紛争でウクライナへの妥協を図るべきとする発言などは危うさを感じてしまう。また神父による児童への性的虐待問題も根本的には解決していないように見える。2024/03/14
penguin-blue
36
『教皇庁の陰謀』というのは中性かルネサンスの事だと思っていた。この本は人々の精神や生きる意味を大きく変えたフランス革命に始まり、宗教が人生の中心だった時代からだんだんと政教分離、個人主義へと動いていく中で、ローマ教皇庁が自身の主張を守りつつ、粘り強く外交交渉を続けながらどう政治力を発揮し、世界の政治にかかわり続けてきたかを描く。領土は全盛期に比べると極端に小さくなったものの、21世紀の現代でも影響力は無視できず、だからこそ各国ともバチカン外交を重視するのが分かるし、特に東欧革命に果たした役割は興味深い。2022/11/19
Koning
24
フランス革命からこちら、バチカンと世俗とのかかわり合いというか、近現代と如何にもがいてきたかという一冊。教皇フランシスコまでしっかり入っているのだけれど、19世紀のあがきっぷりとかファシストやナチとの共闘も結局は反共という1点に絞られたりとか読める。特にイタリア統一とバチカンの関係は時の教皇の方針と枢機卿達の思惑とも相まって実にスリリングな感じがよろしいです。第二バチカン公会議も世俗側というか政治的な側面からの視点もあってその辺は考えさせられる所かと。2013/11/07
Nobu A
17
松本佐保先生著書3冊目。世界史=宗教史とほぼ言えると確信。いや、宗教の造詣なしに世界史や国際関係の理解は困難。松本著書は逆時系列に読んできたが、本著はバチカンの歴史を概観。小説・映画「ダ・ビィンチ・コード」で一躍注目を浴びた国土面積世界最小の国、カトリック教会の総本山。共産党一党独裁国家、中国、ベトナム、北朝鮮とは距離を置く。米史上二人目のカトリック系バイデン大統領が中国らとどのような外交を行うか想像し易い。一読では内容を具には掴めなかったが、面白かった。トム・ハンクス主演の名作をもう一度観てみよう。2021/08/20
中島直人
15
現代史におけるバチカンの果たした役割の大きさに驚く。現代政治の中で宗教が持つウエイトを鑑みるに、もっと関心を持たなければならない分野だと再認識する。2015/02/20