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内容説明
なぜ宗教は争いを生むのか? ウクライナのNATO加盟を巡る対立の裏でキリスト教内の宗教問題を抱える露・ウクライナ戦争に加え、ユダヤ教とイスラム教の確執が背景にあるイスラエル・ハマス戦争が勃発。日本では安倍元総理銃撃事件が起こるなど、人々の宗教への不信感は増す一方だ。宗教は本来、人を救うために生まれたはずなのに、なぜ暴力を正当化しようとするのか? 古代ローマ史研究の大家と国際事情に精通した神学者が宗教に関する謎について徹底討論。宗教が人間を幸福にするのに何が必要かがわかる一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
118
カルト宗教の狂気を見ていると、人は極端な教えを求めるのかと思いたくなる。しかし佐藤氏と本村氏の対談を読んでいくと、結局は各人の価値観を擁護する信仰を求めているのがわかる。その価値観が絶対に正しいと思い込み、政治と結びついてテロや戦争にまで暴走するのだ。ウクライナやパレスチナの戦争に米国の妊娠中絶を巡る議論などは、まさに価値観こそ宗教だと実証している。幾つもの価値観が自らを神に認められた正義だと主張し、他の価値観を容認しないから争いが起こる。多様な価値観を抱くのは人として当然だが、何とか中庸を選べないのか。2024/03/16
trazom
106
ローマ史の本村先生と神学の佐藤さんの激突。全く噛み合ってないようで、それでも、互いに相当危ない直球を投げ合っていて刺激的で面白い。近代民主主義は世俗化したキリスト教と見る本村先生は、ウクライナの戦争を、三十年戦争に似た同一宗教内における前近代的な覇権争いと言う。「自公政権はミラノ勅令。創価学会が与党化した」という佐藤さんは鋭い。佐藤さんが「一神教は明らかに不自然です」と断言するのは驚きだが、「一神教は非寛容」とする塩野史観には二人ともに懐疑的。「メーデン・アガン(ほどほどに)」と諭すのも宗教の役割だから。2024/05/03
gtn
32
ロシア・ウクライナ戦争ほど、国益に直結しない戦争はないと佐藤氏。ウクライナは、この30年で1300万人が国外流出し、また、今もマフィアが幅を利かせており、腐敗や汚職もひどく、核戦争になるリスクを背負ってまで取りに行く利益はロシアにはないと説く。佐藤氏は、この戦争を利権戦争ではなく「宗教戦争」であると見立て、しかも、双方キリスト教がベースにあるので、どちらかが参ったというまで収まらないと推論する。左翼運動家の内ゲバ、暴力団間の抗争、自民派閥間の凌ぎ合い等、いくらでも類例がある。正に近親憎悪。2024/05/22
ta_chanko
27
プーチンから見れば、西側はLGBTQを認める悪魔崇拝。西側が尊重する「人権」も、「神権」が近代になり変容した宗教的もの。ウクライナ戦争は、領土や勢力圏をめぐる戦争であるだけでなく価値観戦争にもなっている。「一神教なるもの」の排他性や残虐性は危うい。仏教の中にも、一向一揆などは一神教的。世界宗教になり得るのは、広まった土地に土着化できる宗教。いつの時代も、何かのきっかけで宗教的なものが暴走する危険性を孕んでいる。2024/03/13
さとうはるみ
17
人間は宗教や宗教的なものなしでは生きられないのだと思わされる。占いや超自然的なものに頼ったりそこに宗教や神を想像するように。非科学的で説明出来ないものの解消やら理由付けに宗教が求められたり。宗教を毛嫌いするのも信仰しすぎるのもどちらも危険だ。古代ギリシャの神託のメーデンアガン(物事はほどほどにせよ)を改めて見直した方がよいと。単純なレッテル貼りは意味が無いとも。一神教も多神教も同じように争うのだと。一神教的な要素がその宗教の中で増えたり減ったりでも変わってくると。2024/06/02
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