内容説明
あの日、風が吹かなければ、私は生まれてこなかった――。藤下歩実は母の奈津実とともに遺影専門の写真館・鏡影館を訪れた。病を抱えた母の撮影のために。そこに飾られた一枚の写真を目にして、母はひどく動揺した様子を見せる。小学五年生の男子二人組、入院中の高齢女性。川沿いの町に暮らす人々が発した幾重もの嘘が、思いもよらぬ場所へと流れ込み……。奇跡の本当の意味を知るミステリ。(解説・香山二三郎)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブ
37
道尾秀介氏の作品が好きだったはずなのに、しばらく手に取ることがなかった。「龍神の雨」に続き読了し、引き込まれなぜ読まなくなってしまったのかと後悔した。偶然の連続で運命が変わっていく。遺影専門の写真館、人生の最後に明かされる真実。でも、その偶然がなければ今の自分が生まれていないとしたら…。2024/03/24
綾@新潮部
21
「嘘」をつくとは。何気なくつく嘘、自分のためにつく嘘、他人を思いやってつく嘘などなどあるが、ひとつの嘘が幾人もの人生を変化させてしまうこともある。連作中編集で読み応えも抜群だし、実は少しずつ絡んでいる人間関係というのが最終的に大きな繋がりを見せたりと、最後まで気は抜けなかった。「まめ」と「でっかち」コンビが好きだなー。表紙をよく見ると浮かんでいる文章も美しくて装丁も好き。2024/04/05
時代
17
2021年に朝日文庫で読んでいたので再読でした。読み始めて暫く気がつかなかった。ともあれ、やはり道尾作品の完成度の高さに唸ってしまいました。レビューは前回書いたので割愛。とてもいい作品です◎◎2024/03/21
けんけんだ
12
引き込まれて一気に読了。同じ場所を舞台にして語られる複数の人たちの人生が現在と過去で交錯し、それぞれの運命を変えていく。最近こういう話の展開が多いような気がする。2024/04/08
海
3
★8。連作短編のような作りの四作品。お母さんの若かりし頃の話は、少し不穏な空気をはらみ、どうなるか、嫌な展開だと読み進めるのが辛いなと思っていましたが、そこまでの展開にはならず。道尾作品は暗い物語の時は本当に暗いイメージがあるので、今作がそうでなくても良かったです。小さな事が繋がって何かに影響を与えている。生きている限り皆そうなのかもしれませんね。言い換えれば、どんな無駄そうな事でも無駄はない、一生懸命日々の生活を大切にしたくなる、そんなお話でした。2024/04/16