内容説明
近い将来、人類はこの怪物に駆逐されるのか。そんな世界で、不可能犯罪が起こった。
目の前には三メートル超えの怪物、背後には震える少年。好感度を何よりも重視する史上最年少市長・利根川翼は、人生最大のピンチに陥っていた。だが、その危機からの脱出直後、「異様な死体」が発見される――。容疑者の一人になってしまった翼は、自身の疑惑を晴らすために謎解きを始める。『スイッチ 悪意の実験』『時空犯』で話題の新鋭が挑む、渾身の本格ミステリ。
〈著者・潮谷験さんからのメッセージ〉
この現代に突然、ファンタジーに登場するような怪物が現れたら、社会はどんな風に変わるだろう? しかも一体や二体ではなく、とんでもない数だったら? そんな空想を膨らませて書き上げた作品です。楽しんでいただけましたら幸いです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
93
ミノタウロスが世界中に出現?!奇抜な設定が面白いモンスターパニックミステリ。水牛に似た頭と黒光りする蹄を持つ怪物の登場により、人類はなす術もなく駆逐されるのかと恐れ慄く。そしてある日眉原市の市議会議場に突如としてこのミノタウロスが出現。好感度重視の20代最年少市長の利根川翼は怯える子供を助けなんとか危機から脱出するが、その後に残されたのはなんとも奇妙な死体。誰かがこの牛頭の怪物の出現を利用して殺人をおこなったのだ。誰がどうやって?自分の保身と市民の安全のために謎解きに挑む翼。ユーモラスで楽しい物語だった。2024/03/11
オフィーリア
69
突如出現する牛頭の怪物が出現する世界で発生した不可解な殺人。突然現れて怖いけど強くないから市町村で対処してねという怪物出現の設定が絶妙。怪物出現のシステムに如何に対応していくかの詳細な描写が実にSFしてますね。会話や展開のテンポも良い見事なSF×ミステリー。2024/02/25
雪紫
66
「なぜならーー、怪物は案外弱かったのだ。」牛頭の怪物が時折現れる世界。対策に追われる京都の眉原市で怪物が。なんとか退けた市長達に、怪物着ぐるみ遺体が出現。それは怪物出現に絡んでいて。犯人であって欲しくないキャラ多過ぎ問題。怪獣対策、世界のありよう、街の政治が軽快なキャラによって読みやすく進みやすいノリでぐいぐい進んでいく。個人的に潮谷さんは特殊設定において、トリックやミステリよりストーリーやキャラの心の方に深く絡めるイメージが強かったけど、今回は綺麗に、ユニークにトリックやミステリに絡んで来た感。2024/05/27
シャコタンブルー
61
モンスターパニックと謳っているが・・突然出現した怪物だが余りにもアッサリと弱点を見せてしまうのはがっかり(笑)。並行して描かれる27歳の市長と市議会派閥のドンとの対立は利権が絡み合い興味深い。そこに突然起こる殺人事件が更に内容を複雑化していく。怪物と殺人。市長と市議会。ユニークな構成だが何だが分散してしまい集中力を削がれてしまった。「シンゴジラ」「進撃の巨人」「進化論」等を想起させるような混沌とした現象が待ち受けていた。市長の翼よりも脇役のモーリス・シガーの方が魅力的で個性が際立っていた。2024/02/24
オーウェン
60
突然世界でミノタウロスが表れる状況になり、眉原市も悩まされる事態に。 女市長の翼は対応に苦慮するが、なんと議会場にミノタウロスが姿を見せる。 始まりはパニックもと思ったら、なんと殺したミノタウロスは着ぐるみであり、議員が中にというミステリに。 ぶっ飛んだ設定だが、ここから研究所に解決を頼んだり、秘書との共同で事件を推理していく。 事態を収束させる部分が荒業であるが、秘書との会話をなども掛け合いが楽しい。 ただ黒幕は予想しやすいかな。2024/04/25