内容説明
古来、雪は生活にさまざまな影響をもたらしてきたが、古代の人々は雪とどのように向き合ったのだろうか。儀式が中止や延期になることもあったが、雪を吉兆ととらえ、雪山作りや雪見を楽しむ都の貴族たち。一方、北国では大雪で交通が滞り、建物は倒壊。吹雪のなかで戦闘が行われることもあった。雪を通して古代の暮らしを描き出す初めての試み。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
於千代
2
久しぶりの大雪に見舞われたので、せっかくならと雪にまつわる本を読んでみた。 本書は、史料をもとに古代の人々と雪の関わりを広く取り上げた一冊。 雪にまつわる様々な指摘が興味深かったが、一番印象に残っているのは、雪が積もると貴族は雪山を作る習慣があったということ。 九条兼実が、雪が積もっているのに朝早く雪山作りに来ない家来にブチ切れている史料が紹介されており、現代人の感覚からすると「そんなことで…」と思ってしまう。しかし、当時の人々にとっては重大な問題だったのだろうと、価値観の違いを実感させられた。2025/02/14
tokumei17794691
1
・皇族や平安貴族たちがどう雪を楽しんだかがよく分かる。・和歌の引用が多数あるが、無粋な者にとっては、平安人のみやびな感性は感じられなかった。・平安貴族の日記を基にして、平安京の降雪日数、積雪量が具体的にまとめられている。・武家が狩猟するのは当たり前だが、天皇が狩猟を、それも雪中でされていたことは考え付かなかった。・江戸時代には加賀藩が将軍へ氷室の雪を献上していたのは知っていたが、平安京の市場で夏に雪が売られていたとは意外だった。2024/04/07
かつきち
1
ちょうど倉本先生の古記録の本を読んだばかりだったので、この「古記録から雪の部分を抽出し分類分けしてカウントした」各論説は、まさに古記録分析で古記録から導かれる古代の人達の雪に対する儀式や生活を蘇らす内容だった。雅なエッセイ要素はなくガチの論文であり大変読み応えがあった。2024/02/18