内容説明
「天から与えられた才能はどこへ消えた?」
舞台はヴィクトリア朝京都。
洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!?
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この手記は脱出不可能の迷宮と化した舞台裏からの報告書である。
いつの間にか迷いこんだその舞台裏において、私たちはかつて経験したことのない「非探偵小説的な冒険」を強いられることになったわけだが、世の人々がその冒険について知ることはなかった。スランプに陥ってからというもの、シャーロック・ホームズは世間的には死んだも同然であり、それはこの私、ジョン・H・ワトソンにしても同様だったからである。
シャーロック・ホームズの沈黙は、ジョン・H・ワトソンの沈黙でもあった。
-----(本文より)
謎が謎を呼ぶ痛快無比な森見劇場、ついに開幕!
目次
プロローグ
第一章 ジェイムズ・モリアーティの彷徨
第二章 アイリーン・アドラーの挑戦
第三章 レイチェル・マスグレーヴの失踪
第四章 メアリ・モースタンの決意
第五章 シャーロック・ホームズの凱旋
エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bunmei
496
シャーロック・ホームズも、森見登美彦にかかるとその舞台は著者のテリトリー京都。お馴染みベイカー通りも寺町通りに、テムズ川も賀茂川に、おまけに『竹取物語』まで引用して、森見流の人を喰った筆致で斬新なホームズ劇場となっている。しかもホームズが名推理どころか大スランプに直面して、探偵稼業を放棄という前代未聞の内容。本人自らがスランプから抜け出す謎を解き明かすという腑抜けのホームズの設定も面白い。また、非現実な世界観が突如として現れ、ファンタジーなミステリーとして仕上げていく辺りも、森見作品らしさが垣間見られる。2024/02/09
うっちー
382
森見登美彦氏の発想がすごい2024/02/14
hirokun
381
星3 私は、シャーロック・ホームズを読んでいないためか、特に前半部分は読み進めていくのに時間がかかった。後半三分の一以降ぐらいからは、ストーリーに引っ張られる形で一気読み。内容的には、ファンタジー、パラレルワールド、推理小説を盛り込んでおり、現実と空想の世界が読み進んでいく中で行ったり来たりするような感覚。まさに摩訶不思議な読後感。この作品を私は正確に理解できたのかどうかはよく分からない。2024/02/15
ひさか
362
小説BOC3、4、5、6、8、10号(2016年10月〜2018年7月)掲載のものを全面改稿して2024年1月中央公論新社刊。分厚さとちょっと変わった京都世界を楽しみにして読みましたが、プロローグ、ジェイムズ・モリアーティの彷徨、アイリーン・アドラーの挑戦、レイチェル・マスグレーヴの失踪、メアリ・モースタンの決意、シャーロック・ホームズの凱旋、エピローグという構成で、起承転結の承部分がとても長く退屈でした。最終章で、事件が一気に進みますが、ありがちな話でふーんそうか的な思いしかなかったです。2024/03/29
R
355
二次創作と呼んでしまってよいと思うけども、メタ認知的な作りになってるから、この作品自身が、この物語を独立させているといったらいいか、ともかくヴィクトリア朝京都なる都市におけるシャーロックはこの作品の通りだろうと、まさに詭弁で押し切られたように感じた、面白かったけどもね。原典を知っているとより楽しめたはずだと思うところも多かったけど、推理小説の顔をして、まったくのSFというのは裏切られたと思うわけだが、詭弁論証とでもいうような内容が、いつも通りとても楽しかった。2024/04/15