内容説明
疫病に荒れた世を建て直す救国の英雄か、
古代社会を破壊する稀代の逆賊か。
謎多き人物の実像に、直木賞作家の筆が迫る。
時は天平。都には天然痘が蔓延し、朝廷にて我が世の春を謳歌していた藤原一族も権勢に陰りを見せていた。その中において、ひとり異彩を放つ男がいた。藤原仲麻呂(恵美押勝)。祖父・不比等や父・武智麻呂の血を色濃く受け継いだこの男は、叔母の光明皇后や次代の天皇である阿倍内親王の寵愛を受け、急激に頭角を現していく。だが仲麻呂は、祖父や父も持ちえなかった、危険な野望を胸に宿していた。北辰の門――この国の皇帝となる道を開こうとした男の、鮮烈なる一生。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
296
読まずに積んでいた一冊。エロ坊主道鏡はある程度知っていたので、どんな風に描いてくるのか楽しみにしていたら、登場したと思った瞬間、なんの脈絡もなく孝謙上皇と二人して発情しだすという意味不明展開。体の関係を持った後は、上皇も道鏡もあまりに利己的すぎて、恵美押勝が急に気の毒になってくるわ、山場となるべき乱が一瞬で鎮圧されるわで、終盤の盛り上がりにやや欠けた印象はある。ドロドロした暗闘の雰囲気はさすがに上手く醸し出せているが、雰囲気のみで、登場人物各々の思考や行動にイマイチ説得力を持たせきれなかった印象。2025/04/06
starbro
197
馳 星周は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。藤原南家三代、ハードボイルド歴史小説三部作、1,300頁弱、完読しました。恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱の物語は、初読です。権謀術数渦巻く朝廷、道鏡まで絡んでいるとは思いませんでした。 https://www.chuko.co.jp/tanko/2024/01/005735.html2024/02/08
はにこ
66
これ三部作なんだね。そうと知らずに読み始めたけど、これ一作でも楽しめた。奈良時代の知識が全くなく、藤原仲麻呂という人物も知らなかったので知識欲を掻き立てられた。人を大事にせず、我が身や末裔の栄華のみを求めた男の半生。女としての喜びを知らずに生きてきた女がそれを得て力を得ていく半生。この二人の人生のコントラストが見事に描かれていた。他の2作も是非読みたい。2024/04/07
雅
65
藤原氏の時代はあまり馴染みがないけど、この頃から権力を求めるのは、人間っていうのはそういう生き物なんだろうな2024/05/14
巨峰
59
実は主人公は敵側の阿部内親王であり、奈良時代を生き抜いた裏司令ともいうべき吉備真備であるかとおもう。道鏡を得て颯爽とふるまえるようになった阿部を助ける老師の吉備真備。道鏡も自らの寄りかかろうとする弓削一族を抑えて阿部の役に立とうとするなど、一種の純愛の物語が、自らしか愛せない者にかったという構図で、すっきりとした結末となった。この後、吉備真備と道鏡でもう一作作れそうです。2024/12/03