内容説明
沖縄戦で、米軍から陣地奪還を果たした大隊があった。奮戦むなしく兵士の9割は戦死。終戦直後から24歳の指揮官・伊東孝一は部下の遺族に充てて「詫び状」を送り続ける。時は流れ、伊東から「遺族からの返信」の束を託されたジャーナリスト夫婦が、“送り主”へ手紙を返還するなかで目撃したのは――。不朽の発掘実話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
29
塹壕に籠り持久戦方針の日本軍。大本営の督促で無理やり攻勢をかけるが多大な損害、その中で唯一の勝利戦となった棚原高地奪取の歩兵第32軍・第一大隊長の指揮者・伊東孝一大尉。辛くも生き残った彼は、戦死した兵士の遺族にその状況を手紙にしたためる贖罪行を始める。本書は、たまたまそんな彼の姿を知った著者らが、戦いの逐一とともに、遺族からの返信報を掲載して沖縄戦の実相をリポート。直前読了「シュガーローフの戦い」に伊東氏の奮戦が登場。しかも今日は、沖縄戦の端緒となる本島空襲初日から80年目。縁を感じざるを得ない読書本。2025/03/23
uniemo
19
沖縄の戦争遺跡を見に行ったことがあります。洞窟は本当に暑くじめじめしていて短時間でも息苦しさを感じました。亡くなるにいたる戦闘の描写も辛いですが、子供や夫を亡くした遺族の方の指揮官への書簡の中の抑えながらもかいま見れる悲しみがとても胸をうちました。20代前半で数百人もの命を預かった指揮官が90過ぎて亡くなられるまで苦しんでいたことも悲しい。2024/05/19
二人娘の父
8
沖縄戦において当時24歳で約800人の大隊を率いた伊東孝一中尉。映画「沖縄決戦」でも登場する「英雄」は戦後、戦死者家族にあてて手紙を送っていた。さらにその手紙に300通以上の返信が。遺族に手紙を出した伊東の思いに胸を衝かれるものがある。さらに本書の焦点はこれまで当事者しか知らなかったこの手紙のやり取りを、現在生存している遺族の子孫につなぐ、というこれまでなかったやり取りを記録したもの。戦地と「銃後」、そして戦没遺族が戦後、どれだけの苦労をして生き抜いてきたかを知る、貴重なドキュメンタリーとなっている。2024/10/29
サクラ
5
私に何が言えるのだろう、普天間基地という重りを沖縄に押し付けて見せかけの平和の中、本当はジリジリと近づいている世界の危機からは恐ろしくて目とつむり顔を背けて生きている、なんの覚悟もない私に何を言うことが出来るのでしょう……どうして戦争を止めることが出来ないのでしょう。それは遥か昔に皆が祈り願ったことだというのに…。本文より『外で生活費を稼ぎながら、家事や子育てもこなし、ついでに亭主も養う』『国家が戦争を始めたからには、我々、戦闘部隊は全力を挙げて戦うしかなかった。それがたとえ愚かな戦争であっても……』2024/05/16
アーク
5
沖縄戦で活躍した指揮官と、その部下の遺族たちとの書簡をまとめたこの本、戦争に関わった人々の心情が如実に綴られていて胸を打たれた。どれも感情は抑制されていたけれど、それだけに無念さが強く伝わってきたな。戦争の残酷さを書簡のやり取りから描いた一冊だった。2024/04/27
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