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内容説明
自分の人生に意味はあるのか,自分に存在価値はあるのか….誰にでも訪れる「むなしさ」.便利さや快適さを追求する現代では,その感覚は無駄とされてしまう.しかし,ため息をつきながらも,それを味わうことができれば,心はもっと豊かになるかもしれない.「心の空洞」の正体を探り,それとともにどう生きるかを考える.
目次
序章 「むなしさ」という感覚
第1章 「喪失」を喪失した時代に
第2章 「むなしさ」はどこから──心の発達からみる
第3章 「間」は簡単には埋まらない──幻滅という体験
第4章 「むなしさ」はすまない──白黒思考と「心の沼」
第5章 「むなしさ」を味わう
おわりに──悲しみは言葉にならない
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
93
著者の北山さんには誕生日が近いこともあり、親近感をフォーク・クルセダーズ当時から抱いていました。京都府立医科大学生でありながら音楽活動を短期間ながら行っていたということにも(自分にはできないだろうなと思いながら)あこがれめいた気持ちを持っていました。今まで北山さんの専門書以外はほとんど読んできているのですが、今回はエッセイと専門のことも収められている中間的な感じで面白い感じでした。「悲しくてやりきれない」(サトウハチロー作詞)当時のことや加藤和彦のことなども触れられています。2024/02/03
コージー
20
★★★☆☆誰もが感じる、日常のふとした瞬間や人生の谷間で感じる「むなしさ」の対処法が書かれた本。精神科医として、フロイトなどの精神分析の理論などを用いて専門的に解説している。掴みどころのない「むなしさ」の正体を数えきれないほど多彩に表現しているが、知識のひけらかしのような印象が先行し、肝心の『味わい方』という核心に迫っていない。要は、避けられない「むなしさ」を噛みしめることが人生であると言っているだけである。元歌手でもあり、合唱でよく歌った『あの素晴らしい愛をもう一度』の作詞家であったことが驚きであった。2024/02/29
スリカータ
12
虚しいという感情は、個人的には悲しいや寂しいよりも厄介だと感じている。虚しさは心のスペースに置いておく。時間をかけて【間】にじっと立ち続ける。間に生じた虚しさを味わい、漂うモヤモヤをなんとなく眺めてみる。それは白黒つけたい心に余裕を与え、自身に奥行きをもたらし、器としての幅を広げてくれるという。2024/03/10
コジターレ
10
あわい、余白、無為…。それらを回避せずに抱え、味わうことが、人間に与えられた能力であり、人間らしく生きていくために大切なことだとずっと考えていた。あわいが喪失された現代だからこそ、その思いは尚一層強くなっている。しかし、本書を読んで「むなしさ」と向き合ってみると、随分とあわいを何かで埋めようとしてきた人生だったと、己を振り返った。むなしさを、あわいを本当の意味で抱え味わうには、相当の胆力がいる。それでも、僕はその胆力を何とか獲得したいと思った。2024/12/29
神戸山
5
どなたかも書いておられたが、きたやまおさむ(&北山修&キタヤマ・オ・サム&自切俳人)の集大成本であると同時に平明平易な「精神分析学」初級入門書でもあろうという離れ業(=離れ技)をやろうとしておられるみたい。長く同伴してきたオールドファンにはしみじみ沁みるが、初めて接する若い読者にどこまで届くかは正直 疑問。224頁を費やして10文字足らずのタイトルをあれこれ語る。自身の体験を元手に、出会ってきた書物人物を頼り、自前の思考を重ねてきた「誠実(生きる姿勢)」には共感するが、「日本語連想」法はいささか強引では…2024/12/15