岩波新書<br> ケアの倫理 - フェミニズムの政治思想

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岩波新書
ケアの倫理 - フェミニズムの政治思想

  • 著者名:岡野八代
  • 価格 ¥1,364(本体¥1,240)
  • 岩波書店(2024/01発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004320012

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内容説明

身体性に結び付けられた「女らしさ」ゆえにケアを担わされてきた女性たちは,自身の経験を語る言葉を奪われ,言葉を発したとしても傾聴に値しないお喋りとして扱われてきた.男性の論理で構築された社会のなかで,女性たちが自らの言葉で,自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想,ケアの倫理を第一人者が詳説する

目次

序 章 ケアの必要に溢れる社会で
第1章 ケアの倫理の原点へ
1 第二波フェミニズム運動の前史
2 第二波フェミニズムの二つの流れ――リベラルかラディカルか
3 家父長制の再発見と公私二元論批判
4 家父長制批判に対する反論
5 マルクス主義との対決
第2章 ケアの倫理とは何か――『もうひとつの声で』を読み直す
1 女性学の広がり
2 七〇年代のバックラッシュ
3 ギリガン『もうひとつの声で――心理学の理論とケアの倫理』を読む
第3章 ケアの倫理の確立――フェミニストたちの探求
1 『もうひとつの声で』はいかに読まれたのか
2 ケアの倫理研究へ
3 ケア「対」正義なのか?
第4章 ケアをするのは誰か――新しい人間像・社会観の模索
1 オルタナティヴな正義論/道徳理論へ
2 ケアとは何をすることなのか?――母性主義からの解放
3 性的家族からの解放
第5章 誰も取り残されない社会へ――ケアから始めるオルタナティヴな政治思想
1 新しい人間・社会・世界――依存と脆弱性/傷つけられやすさから始める倫理と政治
2 ケアする民主主義――自己責任論との対決
3 ケアする平和論――安全保障論との対決
4 気候正義とケア――生産中心主義との対決
終 章 コロナ・パンデミックの後を生きる――ケアから始める民主主義
1 コロナ・パンデミックという経験から――つながりあうケア
2 ケアに満ちた民主主義へ――〈わたしたち〉への呼びかけ
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

78
女性たちの多くがケアを一手に引き受けさせられてきた社会・政治状況の批判から生まれた「ケアの倫理」。本書は1980年代に行われたこの「正義とケアの倫理」論争から始まる。コロナ禍で社会の脆弱性を体験し、「必要なときにしっかりと他者からの配慮や資源の手が差し伸べられる」ケアする/される者の関係性からケアについて考える機会が多くあった。フェミニズムの政治思想として、公私二元論とともに、「誰も取り残されない社会」へ向けて、新しい人間・社会・世界、ケアする民主主義、ケアする平和論、気候正義とケアの視点も論じている。2024/06/17

ネギっ子gen

59
【ケアをする人もまた、ケアされる人。自分には他人によるケアは必要ないと思う人ほど、実際には他者からの気遣いや配慮、物理的な世話になっている】男性の論理で構築された社会で、女性たちが自らの声で語り、自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想、ケアの倫理を第一人者が詳説。<コロナ禍で在宅勤務が増加し、これまで家事に参加していなかった者も、家で過ごすことになった。だからこそ、とくに子育て中の家庭では、無償で、あるいはそれまで主に女性たちが担ってきたケアが露見し、以前よりもケアが注目されるようになった>と。⇒2024/03/20

おたま

57
ここで語られているのは、新しい、というよりもむしろこれまで顧みられなかった「倫理」の発掘だ。それはギリガンの『もうひとつの声で』の深い読み取りに始まる、フェミニズムに表現された女性たちの声から生まれる「倫理」。岡野八代は、これまでのフェミニズムの歴史も振り返りながら、女性たちが社会で担わされてきた「ケア」に照明を当てる。「ケア」(つまり、産み、育て、食べさせ、学ばせ、さらに介護する、看取る等)が、女性に担わされ、家事労働という不払い労働の中に隠蔽されてきた。しかし、この「ケア」なくして社会は成り立たない。2024/03/02

樋口佳之

55
フェミニスト経済学者として、市場を中心とした経済概念を転換させ、むしろ市場外の環境…とされる、家族やコミュニティやその他の経済活動こそが多くの財やサーヴィスを生み出している/彼女が想定する経済は、市場における財の交換に限られず、より広い、人間が生きるうえで他者と相互依存したり、自分たちの心身が必要とする欲求充足のために相互行為したりすること/市場経済とは、そうした広大な経済活動からもたらされたさまざまな資源、たとえば、労働力やひとが結ぶ信頼関係などを利用することで初めて成り立つ、大海に浮かぶ小さな島 →2024/01/28

フム

40
有意義な読書になった。 西洋的な道徳の伝統は、権利、自立、そして正義といった概念を発展させ、それらを普遍的な理論として今の社会が作り上げられている。そのため政治とは自律的・自立的である人によって行われることが当然視されている。しかし、私たちは例外なく、脆弱で傷つけられやすい存在であり、制御し得ない自然からの脅威だけでなく、他者からの危害、放置によっても、傷つけられる可能性を持つ。例えば子ども、障害者、高齢者の存在を考えれば明らかだ。2024/03/22

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