岩波現代文庫<br> ヴァーチャル日本語 役割語の謎

個数:1
紙書籍版価格
¥1,386
  • 電子書籍
  • Reader

岩波現代文庫
ヴァーチャル日本語 役割語の謎

  • 著者名:金水敏
  • 価格 ¥1,386(本体¥1,260)
  • 岩波書店(2024/01発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784006004668

ファイル: /

内容説明

「そうじゃ,わしが博士じゃ」という博士や「ごめん遊ばせ,よろしくってよ」としゃべるお嬢様.現実には存在しなくても,いかにもそれらしく感じてしまう言葉づかい,これを役割語と名づけよう.誰がいつ作ったのか,なぜみんなが知っているのか.そもそも一体何のために,こんな日本語があるのだろう?(解説=田中ゆかり)

目次

役割語の世界への招待状
第一章 博士は〈博士語〉をしゃべるか
1 お茶の水博士
2 天馬博士
〈博士語〉をしゃべらない博士
〈博士語〉は〈老人語〉?
「現実」とのずれ
3 〈博士語〉をさかのぼる
手塚治虫の初期作品
日本SFの祖・海野十三
『少年倶楽部』
『立川文庫』と演芸速記本
戯作の世界
『四谷怪談』から
江戸語の形成
〈博士語〉〈老人語〉の起源
第二章 ステレオタイプと役割語
1 ステレオタイプって何
小説家の悩み
ステレオタイプの研究
2 「現実」対「仮想現実」
役割語と位相・位相差
現実と役割語との距離
3 文化・メディアとステレオタイプ
サブタイプ化
二重処理モデル
分離処理モデル
4 ヒーローの旅
第三章 〈標準語〉と非〈標準語
1 〈田舎ことば〉はどこの言葉か
「夕鶴」から
〈田舎ことば〉の起源
2 〈標準語〉の構造と役割語
役割語としての〈標準語〉
話しことばと書きことば
役割語度
役割語度と自己同一化
3 〈標準語〉の成立
〈標準語〉以前
言文一致運動と標準語
マスメディアと〈標準語〉
転落する〈上方語〉
4 大阪人・関西人キャラクターの変遷
パーやん
大阪人・関西人のステレオタイプ
大阪人・関西人のルーツ
近代マスメディアの中の大阪人・関西人
好色・暴力と大阪人・関西人
ステレオタイプの変容
第四章 ルーツは〈武家ことば〉――男のことば
1 〈標準語〉の変化
雨ふり
役割語度の変化
2 〈男性語〉の歴史
〈書生ことば〉
「~たまえ」の歴史
ボクとキミ
ボクとオレ
3 仮面(ペルソナ)としての役割語
第五章 お嬢様はどこにいる――女のことば
1 お蝶夫人
2 言葉の性差
文法的特徴から
男女専用表現と傾向的表現
3 『浮世風呂』の女たち
4 江戸語と近代〈女性語〉
5 「てよだわ」の発生
『浮雲』の母と娘
非難されていた「てよだわ」
6 「てよだわ」世にはばかる
メディアとしての女学校
小説に見る「てよだわ」
7 「てよだわ」なおも広まる
女学校の外へ
全国への拡散
8 「てよだわ」の衰微
戦後の〈女性語〉の変化
「~てよ」の文法
少女と〈お嬢様ことば〉
役割語としての〈男性語〉〈女性語〉
第六章 異人たちへのまなざし
1 〈アルヨことば〉
2 異人の分類
3 言語の投影
さまざまな投影
黒人と〈田舎ことば〉
4 〈アルヨことば〉の原型と展開
ピジンの適用
Yokohama Dialect
アリマス系とアル系
中国人へのまなざし
「のらくろ」から
5 役割語を超えて
附録 役割語の定義と指標
用例出典一覧
参考文献
あとがき
現代文庫版あとがき
解説……………田中ゆかり
語彙索引
人名・題名索引
事項索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たま

49
読メで教えられた本。とても面白い。フィクションの中の、博士、お嬢様、異邦人などステレオタイプの話し方の歴史的分析。欧米の小説の翻訳で黒人の召使いが「ごぜえますだ」と話すのを思うと、このステレオタイプの影響は強烈だ。現実の生活でも普通のスピーチに関西弁を交ぜるとそこで(とくに面白くなくても)笑いが取れるのは関西弁のステレオタイプ化によるだろう。学生を対象に僕/俺の使用を調べると、女子学生が俺使用者に好感という結果にびっくり。私自身はこれまでの人生で私に対して自分を俺という人に会ったことないのだが。2023/09/19

チャーリブ

39
第一章の「博士は〈博士語〉をしゃべるのか」では、あのお茶の水博士の「わしはアトムの親がわりになっとるわい!」という、現実の博士が使っていないような独特の言い回しが取り上げられます。著者は、こういったステレオタイプな役割にあてがわれる言い回しを「役割語」と名づけて研究している学者ですが、本書ではマンガや江戸・明治の読み物などが縦横無尽に引用されていて楽しく読めます。「女性語」の話や、かつて権威であった上方語が東京語に取って代わられてお笑いの言葉になってしまった顛末とか、興味が尽きません。○2023/08/09

さとうしん

13
役割語、すなわち日本語会話(文)のステレオタイプに関する議論。博士、田舎者、関西人、お嬢様、異国人等々漫画に見られるキャラクターの言葉遣いを取っかかりとして、それらのルーツを江戸、明治の読み物や小説にまで辿っていき、それぞれの役割語成立の背景を探る。更にはそれらと対比的な標準語がヒーローの言葉遣いであることを明らかにする。外国語に役割語のようなものが存在するかどうかかが気になるところだが。2023/06/15

Akito Yoshiue

11
関西弁を話すキャラクターにトリックスターとしての役割が付与されることがあるというのに納得。2024/01/11

MASA123

10
新刊本かと思ったが、2003年の本の復刻版でした。 A:わしがアトムの親がわりになっとるわい。B:野生のポケモンと戦わせるんじゃ。C:ワシがこの子の世話をたのまれとったんじゃが・・・Aはお茶の水博士、Bはオーキド博士、Cは名探偵コナンの阿笠博士だ。わし、じゃが、とかのステレオタイプの博士語は、アニメ界ではずっとつかわれている。あら、ごめんあそばせ、というマダム語も実際に、聞いたことがない。このような、言葉づかいでキャラクラーを特定できる便利な言葉を「役割語」というらしい。役割語の謎解き、おもしろそう。2024/04/27

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/21209324
  • ご注意事項

最近チェックした商品