内容説明
レイキャヴィクのアパートの一室で、刃物で喉を切り裂かれた若い男の死体が発見された。男はレイプドラッグと言われるクスリを所持しており、バーやレストランで出会った女性にクスリを混入した飲み物を飲ませて意識を失わせ、レイプしていた常習犯らしい。被害者による復讐か? 犯罪捜査官エーレンデュルが行方不明のなか、同僚のエリンボルクは現場に落ちていた一枚のスカーフの香りを頼りに捜査を進める。世界のミステリ読者を魅了する北欧の巨人の人気シリーズ第7弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
120
シリーズ7の一冊。今回はエーレンデュルではなく、同僚の女性刑事エリンボルクが主役。それでも陰鬱な世界観で惹き込むリーダビリティは健在。極悪非道のレイプ犯が殺された事件。被害者女性による復讐か?現場に残されたスカーフの残り香から地道に捜査を進めていく過程はやっぱり面白い。レイプは殺人と同等というエリンボルクの考え、被害者女性の心の傷に寄り添いつつ、沈黙は無に値すること、そのやりきれなさを説く姿が実に好印象。そんな彼女の家庭事情も意外と深い渦が巻く。一人の女性としての一面、感情に随所で共感できたのも良かった。2024/02/21
yukaring
99
シリーズ第7弾。今回はスピンオフ的な趣向で主人公はなんとエリンボルク。いつもは脇役のこの女性捜査官がこんなに行動的で粘り強く真実を追うタイプだとは知らなかった。喉を掻き切られ死んだ被害者は実は女性を薬で眠らせ暴行を繰り返すレイプ魔だった。事件は被害者による復讐なのか?現場に落ちていた一枚のスカーフの香りから捜査を進めるエリンボルク。彼女らしい独特な視点から事件の真相が一歩ずつ明らかになる。家庭では子供達との問題も抱えながらも全てに全力で取り組むエリンボルク。この等身大のリアルさとひたむきさがとても眩しい。2024/02/22
ナミのママ
84
シリーズ7作目。2024年新作(原作は2008年)殺されたのはレイプドラック犯。いつもながらの残念な犯行現場、始終漂う重苦しい背景、まさに北欧ミステリ。とはいえアイスランドは犯罪率の極めて低い国らしい。今回の主役は女性刑事エリンボルク、刑事としての活躍と共に、子供を育てながらフルタイムで働く私生活が描かれている。へー、こういう働き方をするんだ、と大筋とは別に面白かった。安定した作品だがエーレンデュルはどうした?彼に何があったんだろう。やっぱり彼がいないと…。次はまた一年後かな。2024/01/23
kaoru
83
今回はエーレンデュルの同僚エリンボルグがレイプドラッグを使う男ルノルフルが無残に殺害された案件を担当する。レシピ本も出すほど料理の好きな彼女の香辛料についての知識が事件の解決に役立つ箇所はなかなか。レイプの被害者が苦しむ不条理な世界に憤りつつも良き母であろうとするエリンボルグは、息子の反抗に悩み「ママはどんな仕事をしているの?」と聞くお気に入りの末っ子テオドーラに「彼女を怯えさせる世界」が待っていることを憂える。アイスランドの地方に閉鎖性が残っているのは日本に似ている。行方不明のエーレンデュルの所在が→2024/03/21
ふう
75
エーレンデュル捜査官シリーズ7作目。でも今回エーレンデュルは所在不明で、同僚のエリンボルクが中心となって怖ろしいレイプ犯罪の捜査にあたります。警察官といえども一人の人間。悩みもあるし、家族がいると思うようにならないこと、気持ちがすれ違うこともあります。そして、家族への思いが強い分、被害者の悲しみや苦しみから目を背けることができず捜査にのめり込んでいきます。「湿地」でも思いましたが、今回も殺される側より殺す側の苦悩が深く、ミステリーとしての悍ましさとエリンボルクの使命感に考えさせられることの多い作品でした。2024/06/20