東京都同情塔

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東京都同情塔

  • 著者名:九段理江【著】
  • 価格 ¥1,870(本体¥1,700)
  • 新潮社(2024/01発売)
  • 輝く夏空!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~7/13)
  • ポイント 510pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784103555117

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内容説明

ザハの国立競技場が完成し、寛容論が浸透したもう一つの日本で、新しい刑務所「シンパシータワートーキョー」が建てられることに。犯罪者に寛容になれない建築家・牧名は、仕事と信条の乖離に苦悩しながら、パワフルに未来を追求する。ゆるふわな言葉と実のない正義の関係を豊かなフロウで暴く、生成AI時代の預言の書。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

710
新しい時代の文学だという感じが充分な手応えとしてある。その意味では、まさに芥川賞に相応しいのだろう。近未来ユートピア小説(ただし、それは受け止め方によってはディストピアであるかもしれない)としての構築性も揺ぎがない。主人公のサラ・マキナをザハ・ハディドに比肩する建築家として設定し、かつ幻の国立競技場に隣接する東京都同情塔を設計、建築する構想もスケールが大きく、しかもそれ自体が斬新である。さらには、篇中にAIの言説を散りばめ、時にそれとの対話によってプロットを進行させる手法も読者を幻惑させ、混乱に陥れる⇒2024/02/28

starbro

452
第170回芥川賞候補作・受賞作第三弾(3/5)、今回は受賞作、九段 理江、2作目です。本書は、近未来令和版バベルの塔生成AI物語でした。既読2作よりもインパクトがあり芥川賞受賞作っぽいですが、全作読んでから論評したいと思います。 https://www.shinchosha.co.jp/book/355511/2024/02/19

青乃108号

444
ザハ・ハディッドの新国立競技場の隣に建築される、された、東京都同情塔。改めて検索し直してみて驚いたが、こんなとんでもないデザインの建造物を建てようとしていたのか。その国立競技場に完全に調和した形状の東京都同情塔の外観は想像も出来ないが、問題はそこではなく、ましてや東京都同情塔が実は犯罪者の収監施設である事でもない。言葉そのもの、言葉で考えて一度頭の中で検閲した後放たれる、言葉というものの存在の危うさ。AIが生成した文章が一部組み込まれているが、小説として読んで違和感を感じない。人間の生身の言葉って何て。2025/06/05

ちくわ

383
冒頭…こ、これがTokyoか!田舎モンにはキラキラし過ぎて眩しい世界だ(笑)。昭和生まれのオッサンには飲み込めない部分もあれど、咀嚼出来る断片を繋いで朧気に理解出来た…のか?物質であれ非物質(言葉や価値観)であれ、異質なもの…特に相容れないものと対峙した際、人が抱く違和感や抵抗、慣れを描いていたような気がした。読了後に感想を見て批判の多さに驚く。それがマサキ・セトを殺害した男の言葉「馬鹿にしているのか? 意味のわかる言葉で喋れ」とダブった。マサキ・セト、牧名沙羅、九段理江…創造者は理解され難いのだろう…。2024/04/19

道楽モン

379
今回の芥川賞も前回に続き大当たり! また新たな才能の出現。AIの援用は単なる手法で、より重要なのは、短編ながら偽善性と傲慢さを表出させる試みであること。バベルの塔や聖書を隠喩として仕掛けているのも、人類の歴史への投影だろう。我々が生み出したテクノロジーや人工物なぞ、いくら進化しても、人間の本質に潜む動物性と理性の矛盾や、煩悩と博愛の葛藤は何も解決できない。筆者は、唯一の知性の希望である「言葉」を偽善の道具でしか利用できない、表面的な価値観でしか連帯できない日本の国民性に、強烈な疑問符を投げかけている。2024/01/21

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