内容説明
――これまでの歳月を振り返ってみると、竹向殿と私(足利尊氏)とは、奇縁で結ばれているものですね。後の北朝初代・光厳帝の典侍を務めた日野名子〈ひのなかこ〉は、関東申次として権勢をふるった西園寺家の若き当主・公宗の正室となる。だが彼女の栄光の日々は、後醍醐院の謀略と足利尊氏の裏切りにより、あっけなく失われることに。そしてそれは、数多の武家と公家、皇族が互いに争い合う、混沌の時代の幕開けだった――。度重なる戦乱に人生をかき乱され続けた彼女が最後に見抜いた、尊氏の抱える「秘密」とは。名子が著した、最後の宮廷女流日記文学として名高い『竹むきが記』を下敷きに、激動の室町幕府揺籃期を活写する歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
140
愛する男と結婚し平穏な未来を疑わなかった公家の娘が、鎌倉幕府滅亡から建武の新政に至る激動期に巻き込まれあがき続けるドラマ。夫は後醍醐帝暗殺未遂容疑で処刑され、夫を密告し死に追いやった義弟に家を追われ、最悪の状態で息子を生むという壮絶さ。亡夫の遺志を継いで足利尊氏と協力して息子を嫡流としたが、今度は尊氏と弟直義の対立で起こった観応の擾乱を目撃する。兄弟仲の良し悪しに翻弄された生涯の果てに、本当は弟を愛していた尊氏の人間性を悟る結末は感動的。太平記を女の視点から見ることで、男の身勝手な愚かさ故の悲劇が浮かぶ。2025/08/27
たま
87
これまで羽生飛鳥さんは平安末期鎌倉初期を舞台にしてきたが、この本は鎌倉末室町初期のややこしい時期、しかも視点人物の日野名子の回想で時間が行き来し苦労して読んだ。名子と西園寺公宗の恋は美しく、次々に巻き起こされる戦乱で名子は苦労するが、彼女を取り巻く人々の気持ちがきれいでその点気分よく読んだ。尊氏と弟直義の不和がミステリー要素で、最後に名子が直義の死を推理するが、死後の地獄世界に関する当時の仏教思想に基づくもので(東山彰良さんの『三毒狩り』を思い出した)、その消息に昏い私にはやや消化不良の結末となった。2026/04/10
がらくたどん
54
戦国時代なら「俺が一番になりたい!」の群雄割拠でまだ分かる。ひたすら殺し合うのにイマイチ目的が見えてこない中世の最混沌期南北朝を『竹むきが記』の筆者日野名子の視線で紐解くエンタメ歴史ミステリー。名子が愛した夫西園寺公宗と異母弟公重の不仲を嘆く度に比べてしまう超仲良しの足利兄弟。それなのになぜ兄の尊氏は弟直義を毒殺したのか?天皇同士の皇統争い。そこに台頭の機会を窺うもはや朝廷の単なる手駒ではない武装一族。間を取り持つ関東申次を務める高級貴族の西園寺家。冷く静な策略と熱く残酷な素朴が中世の空を焼く。面白かった2026/05/18
さつき
54
南北朝時代を生きた日野名子が主人公。帯にあるような足利尊氏と弟直義の物語と名子の人生がどのように交差するのかドキドキしながら読み進めました。悲劇に見舞われた名子が、逃れられない悲しみ憎しみからどのように立ち直るのか。その様子には時代が変わっても人間は同じに違いないと思わされ、とても心を揺さぶられました。2025/09/28
まえぞう
33
太平記ものですが、他とは違って、関東申次の西園寺公宗に嫁いだ日野君子の目から描かれているところがユニークです。足利尊氏は本当に難しい人で、ここでは弟、直義への愛で整理していますが、これも少し違うように思います。極楽征夷大将軍を読んだ時も、この時代を再度大河ドラマで取り上げて欲しいと思いましたが、波乱の人生をおくられた光厳天皇を主役でいかがでしょうか。2025/10/17
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