内容説明
セクシュアリティをはじめとし,近代社会において私的領域の深奥に秘匿されてきた事柄の政治性を鋭く分析する本書は,あらかじめ定められた物語を攪乱し,語りえぬものに声を与える政治と倫理の新たな地平を切り拓いた.精緻な理論でフェミニズム批評の最前線を走りつづけた著者の代表作,待望の文庫化.(解説=新田啓子)
目次
序 「愛」について「語る」ということ
第一章 [ヘテロ]セクシズムの系譜――近代社会とセクシュアリティ
第二章 愛について――エロスの不可能性
第三章 あなたを忘れない――性の制度の脱-再生産
第四章 アイデンティティの倫理――差異と平等の政治的パラドックスのなかで
第五章 〈普遍〉ではなく〈正義〉を――翻訳の残余が求めるもの
註
文献
竹村和子主要著作
解説すべてが途切れなく 新田啓子
初出一覧
人名リスト
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
17
〈自分自身がいかに既存の言語のなかに幾重にも取り込まれている存在なのかに気づいて、愕然とした。〉〈自分が粉々に砕けるような気がして、恐ろしくて身がすくむ思いがした〉…いやまさしく。解いても解いても、まだある。どこまでも解けてしまえることの怖さ。けれどもまだ十分ではない。解いても解いても解き切れはせず、抜け出すにはまだ至らない。気が遠くなりそうだった。〈慣習的な約束事なしに機能することができない言語活動は、わたしたちの声を―わたしたち自身の声であるはずなのに―いつも、どこかべつの場所からの声にしてしまう。〉2022/02/23
ゆう
13
人生のオールタイムベストに入る、大切な本になると思う。2025/05/27
どら猫さとっち
9
フェミニズム、LGBTが世間知されるようになった昨今、本書の文庫化は、より多くの人たちに飲まれるようになるだろう。同性愛、親子、そして、愛することとは何かを、鮮明に綴った批評。著者は10年前ほど世を去ったが、このように認知度高いものになった現在を、どのような想いで見たことだろう。そして、著作を通して伝えたいこと、考えなければならないことを、私たちは身をもって知るに違いない。2022/05/05
♨️
6
読書会で再読。社会を作り上げ、その社会の中から拾い上げた言葉からなる「わたし」を作り上げているものについての系譜学、精神分析学(の脱構築)、政治学を通じて、今この言葉で辿り着くことの(不)可能な場所——そこを竹村は「愛」と呼ぶのだと思うが——を垣間見せる。竹村の議論が垣間見せる、そこまで登ることが大変で、それでも少し空気の美味しいような場所を、そこを忘却させようとする〈言語〉のなかで「忘れない」こと、自分のなかの謎を愛することが、政治に通じていく。2022/11/28
バーニング
2
第1章、1997年に発表された「[ヘテロ]セクシズムの系譜」が抜群に面白く、現代の読者にもかなりのリアリティを伴って響く議論がされていると思う。同時に、ここで議論されているヘテロセクシズムの「悪さ」に対抗することや、異性愛主義によってあらゆるものが形づくられる社会の規範を無効化することがいかに困難であるかもまたリアリティを持っているように思う。竹村の言うヘテロセクシズム(による差異や分離による差別的取り扱い)の無効化は夢のような話かもしれないが、夢を見て良いと思える社会を望む。2025/01/09
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