内容説明
「ネステッド・クライシス」の時代を生きる日本人へ!
時事問題にも積極的に発言してきた「活動する哲学者」ガブリエルの目に映る、日本社会の「レイヤー」とは何か? 「90年代で足踏みしている」と評された日本人は、これからどうすればいいのか? 気候変動に始まった複合的な危機の時代を見通す視座を伝授する!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
101
資本主義や民主主義の限界を主張する論客が多い中で、ガブリエル博士は、資本主義を肯定した上で「倫理資本主義」を提唱する。経済活動を、哲学や価値観などの形而上学に基いたものへと転換する新しいモデルである。直線的な進歩の概念から脱却した輪廻転生の循環思想を持つインドと日本に注目する。コロナ禍で、国家の命令に従う西洋より、自主的な対応ができた日本の方がよほど「個人主義」が確立しているという見立ては面白いが、昨今、政治家・企業ともに著しく倫理から離反しつつある日本社会が、新しい変化を先導することができるのだろうか。2024/05/14
Tenouji
24
後半から、非常に面白くなって、一気読みw。そっか、「こころ」を失ったのは日本人(夏目漱石)だけではなかったのね。直線的な欲望をイメージしてしまう資本主だが、この先は徐々に螺旋状に折りたたまれていくイメージ。その時、日本のガラパゴス的な弱みが強みになる、のかな?2024/02/27
呼戯人
17
マルクス・ガブリエルのNHKによるインタビュー集。かたり下ろしなので、焦点が惚けているし、こんなことを言うためにわざわざインタビューしたのかよ、と言った感じの本。気候危機を言いながら、資本主義は肯定しているし、搾取や差別や格差に対する批判もない。哲学は現実を説明するためのものと言っている割には、その説明が曖昧でつまらないものが多い。2024/01/30
ねむ
14
NHKの番組を書き起こした本らしいのですが、私はその番組を見ていないので活字だけで。テレビだけあってわかりやすい言葉で書いてはあるのだけど、随所に入ってくる日本ヨイショ的な発言がどうも話の筋に沿っていないような微妙な感じを受けた。西洋は個人主義、東洋は集団主義という括りが実は逆転していることがコロナ対応でわかったというのは面白い視点だなと思った。ただ、今の日本を見ているとみんなで個人主義に流れよう、という意味での集団主義が自己中を正当化しているようにも思え、その辺り確かに氏の言う「新たな物語」が必要かも。2024/09/15
武井 康則
11
NHKbs1「欲望の時代の哲学2023」の書籍化。哲学や文学は何の役に立つかという問いがあるが、ウクライナ、イスラエルとまさしく混迷の時代で指針が欲しい時にはエマニュエル・トッドや国際情勢、現代史に詳しい人の原因、分析が光る。原因分析があっても解決はなく、それを導くのが本質を見る哲学のはずだが、本書では一時もてはやされたマルクス・ガブリエル大好きな人たちが集まってキャーキャーと声援を送っているだけにしか見えない。日本の印象等を聞くだけでさすがにこれではと思ったのか、「おわりに」でプロデューサーの丸山俊一→2024/05/10