内容説明
母・樹木希林と 父・内田裕也を たてつづけに喪った。
虚しさ、混乱、放心状態、ブラックホール……。
「人生の核心的登場人物を失い空っぽになった私は 人と出会いたい、と切望した」
谷川俊太郎 小泉今日子 中野信子 養老孟司 鏡リュウジ 坂本龍一 桐島かれん 石内 都 ヤマザキマリ 是枝裕和 窪島誠一郎 伊藤比呂美 横尾忠則 マツコ・デラックス シャルロット・ゲンズブール
独りで歩き出す背中をそっと押す、15人との〈一対一の対話〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nonpono
81
有名人の弔辞を動画で繰り返し見たくなるのは赤塚不二夫へのタモリと内田也哉子の裕也だけである。内田也哉子の「彼は破天荒で、時には手に負えない人だったけど、ズルイ奴ではなかったこと。地位も名誉もないけれど、どんな嵐の中でも駆けつけてくれる友だけはいる。」のくだりが好き。樹木希林が「こんなわたしに捕まっちゃって」といい、樹木希林の最期に電話口で名前を叫んだら、樹木希林が孫の手を握り返したエピソード、また、横尾忠則のポスターを褒めたくて居場所を探す話が響く。内田也哉子の文章を通じてまた裕也が脳裏にこびりついた。2024/07/19
ネギっ子gen
67
【42歳、いのちの折り返し地点に立った私は、気づけば台風の目のような静寂に包まれていた――】5年前、私は母と父を立て続けに喪った……。大きな喪失を抱えて谷川俊太郎、小泉今日子、坂本龍一、伊藤比呂美ら15人と1対1で対峙して綴ったエッセイ集。<この喪失という名の空っぽの旅に、一歩踏み出すことにした。人生の核心的登場人物を失った私は、ありとあらゆる生業の、それぞれまったく異なる心模様を持った人間に出会いたい、と切望した。強風に薙ぎ倒された道しるべを頼りに、時に寄り道しつつ、行方知らずの放浪の旅に出た>と――⇒2024/03/20
竹園和明
47
立て続けに両親(しかも毒の強い強烈な)を喪った著者の、「空っぽを満たす」ための対談集。15人の著名人が名を連ねる。印象的だったのはまず小泉今日子。樹木希林が彼女を認めていた事は知っていたが、なるほど腹の座り方が似てるわ。中野信子とは脳科学の面から夫婦関係について。とても興味深い内容だった。詩人の谷川俊太郎は両親への想いを軸に詩を綴る意味を。本作は也哉子さんにとって、散らかった両親への想いをパズルのピースを埋めるように整頓して行く作業だったのでは。一話一話、読者にも必ず何かが残る。すごくいい。お薦めです。2024/06/22
punyon
46
知的センスと己を真摯に見つめる視点、周りに対する気遣いに溢れた素敵な文章。普通の家族という枠からは大きく外れた所で育った淋しさが言葉の端々に見え隠れする。幼い頃は一風変わった母親が重荷だったかもしれないが、その孤独感と受容力の高かった母の血と彼女が繋いでくれた素晴らしき人間関係が今の彼女を作り出している事を自身が一番よくわかっている。だからこそ、失ったものの大きさに戸惑っているのだろう。が、本書を読み終えて感じるのは、彼女の心の空虚さではなく、私自身の生き方の貧弱さ傲慢さ…あー、まだまだ修行が足らん💦2024/05/08
彼岸花
38
40代そこそこで、両親をたて続けに亡くした也哉子さん。悲しみはいかばかりか。樹木さんは娘に迷惑をかけないように、裕也さんをいち早くあの世へ連れ去ってしまったように思う。我が子に対する、最後の愛情だったのではないか。喪失の旅は、一対一の対談で形式は様々。人脈の広さは母親譲りだろう。語られる断片から、樹木さんの生き方や考え方が、也哉子さんへ引き継がれていると、ほのかに感じ取れた。人との出会いは、自分を見つめ直すきっかけにもなる。文章がしなやかでとても美しい。彼女の心が少しずつでも修復できますように。2024/04/18