内容説明
わたし、悪くない。ひとりで破滅なんて絶対しない。妻に先立たれ養子の息子と向き合う老人。仕事が忙しい妻を支える気弱な夫。地方の美術館でくすぶり続ける学芸員。倒産や理不尽なリストラで無職となった同級生たち。借金苦から逃れようともがく老女。会社ぐるみで不正を隠蔽する社畜たち。彼らに正論は通じない。ひとつの嘘から、転がりだす悪意の連鎖。強がり、もがき、這い上がろうとする嘘つきたちが最後につかんだものは?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
189
岩井さん短編も読ませる!『堕ちていく6つの人生』と帯にある。あぶないあぶない・・そこにある闇だ。そう来たか!だったり、えー最後の言葉は何?だったり、してやったりで、どれも後味は悪いのに引き込まれてしまう6編だった。中でも『僕はエスパーじゃない』『極楽』『堕ちる』は特に惹かれた。ダークの岩井さん?岩井さんのダーク?これからも期待してしまう。2024/01/31
hiace9000
176
人は知らぬ間に「暗い引力」に捉われ闇に向かって堕ちていく…。不可視の不穏な空気感を、それぞれの短編に絶妙に織り込み醸し編み上げた、いずれも力作揃いの秀作6作品。描き幅の広さには定評のある岩井さん、イヤミスともホラミスとも言える本ジャンルでもいかんなくその実力を発揮。すべての作品の底流にあり、通奏低音を成す書名ー、それは欺瞞に満ちた社会の日常に潜み、人間の弱さや後ろめたさの陰にぽっかりと口を開け、陥ってくる人間を待ち受けている。読みながらゾクリとする、その仄暗さへの多様なる誘いは、もう病みつきになりそう。2024/03/30
モルク
120
6話の短編集。妻を亡くし養子である息子とかつて妻と泊まった宿、漁場を訪れる。そこで息子に語った養子に至った事情、そして真実を見破った息子は…の「海の子」。自分の妻しか描かなかった隠れた天才画家藤代の作品展の準備をする学芸員。藤代の遺した「堕ちる」の言葉の意味を追ううちに本当に堕ちたのは…の「堕ちる」が印象的。でも「僕はエスパーじゃない」の子供の頃から親や他人の顔色をうかがってきた主人公が自分と重なり苦しい。2024/02/27
ma-bo
106
嘘。他人、家族、会社、心の中、ひとつの嘘からの悪意や闇。正に暗い引力に引っ張られる6編の短編集。岩井さんは作風が多彩だなぁ。2024/03/27
ゆみねこ
98
最近注目している作家・岩井圭也さん。様々な理由で嘘をつく人を描いた6つの短編。妻に先立たれた夫と養子の息子・周りの人の顔色を覗いながら生きてきた男と気の強い妻・理不尽に仕事を無くした男達が起業?・認知症を装い借金取りから逃れる老女・過労死で夫を亡くした妻と会社の闘い・地方の美術館に就職した学芸員の女。どれもゾワっと…。2024/01/22