内容説明
わたし、悪くない。ひとりで破滅なんて絶対しない。妻に先立たれ養子の息子と向き合う老人。仕事が忙しい妻を支える気弱な夫。地方の美術館でくすぶり続ける学芸員。倒産や理不尽なリストラで無職となった同級生たち。借金苦から逃れようともがく老女。会社ぐるみで不正を隠蔽する社畜たち。彼らに正論は通じない。ひとつの嘘から、転がりだす悪意の連鎖。強がり、もがき、這い上がろうとする嘘つきたちが最後につかんだものは?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
244
初読の作家の短編集。6編収録されているが、どの作品も粒揃いの秀作である。中でも②の「僕はエスパーじゃない」⑤の「蟻の牙」⑥の「堕ちる」がお気に入り。②の主人公の男は俺そのものであった。⑤は今話題の「公益通報」を扱っており興味深かった。⑥は絵画に取り憑かれた無名の画家の狂気と、彼の絵を何とか世に知らしめんとする無名の学芸員の狂気に引き込まれた。短編としてプロットは良く練られているし、締めくくりも気がきいていて心地よい。筆力も優れており、ぐんぐん読ませる。これは良い作家を知った。他の作品も是非、読んでみたい。2024/09/18
いつでも母さん
196
岩井さん短編も読ませる!『堕ちていく6つの人生』と帯にある。あぶないあぶない・・そこにある闇だ。そう来たか!だったり、えー最後の言葉は何?だったり、してやったりで、どれも後味は悪いのに引き込まれてしまう6編だった。中でも『僕はエスパーじゃない』『極楽』『堕ちる』は特に惹かれた。ダークの岩井さん?岩井さんのダーク?これからも期待してしまう。2024/01/31
hiace9000
186
人は知らぬ間に「暗い引力」に捉われ闇に向かって堕ちていく…。不可視の不穏な空気感を、それぞれの短編に絶妙に織り込み醸し編み上げた、いずれも力作揃いの秀作6作品。描き幅の広さには定評のある岩井さん、イヤミスともホラミスとも言える本ジャンルでもいかんなくその実力を発揮。すべての作品の底流にあり、通奏低音を成す書名ー、それは欺瞞に満ちた社会の日常に潜み、人間の弱さや後ろめたさの陰にぽっかりと口を開け、陥ってくる人間を待ち受けている。読みながらゾクリとする、その仄暗さへの多様なる誘いは、もう病みつきになりそう。2024/03/30
hirokun
128
★4 岩井圭也さんは、私の好きな作家さんの一人で、新刊を中心に読んでいるがこの作品は9冊目。六作の短編集で、私は岩井さんの短編は初めて。いろんなジャンルの作品の書ける作家さんで、今作は、少し捻りがありかつエスプリも効いているような作品だが、特に『蟻の牙』は現実に起きていること、組織に引きずられる人間の弱さを表現しており、実感を伴い気持ち悪さも感じながら読了した。岩井さんの短編、悪くない。2024/03/18
モルク
126
6話の短編集。妻を亡くし養子である息子とかつて妻と泊まった宿、漁場を訪れる。そこで息子に語った養子に至った事情、そして真実を見破った息子は…の「海の子」。自分の妻しか描かなかった隠れた天才画家藤代の作品展の準備をする学芸員。藤代の遺した「堕ちる」の言葉の意味を追ううちに本当に堕ちたのは…の「堕ちる」が印象的。でも「僕はエスパーじゃない」の子供の頃から親や他人の顔色をうかがってきた主人公が自分と重なり苦しい。2024/02/27




