内容説明
ノースカロライナ州の湿地で青年の遺体が見つかる。村の人々は「湿地の少女」カイアに疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられ、人々に蔑まれながらたった一人湿地で生き抜いてきたカイアは果たして犯人なのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさか
144
2018年8月刊のWhere the Crawdads Singを翻訳して、2020年3月早川書房刊。2023年12月ハヤカワNV文庫化。面白いタイトルだなぁと気になっていたら、映画化もされていた。手に取ると地味で、ストレートで、少し長くて、たいへんでしたが、ラストのちょっとした(いや、かなりかな)驚きもあって、悪くない読書体験でした。2024/02/16
ま~くん
105
ジャンル不明と聞かされていた愚息推薦本。文学か恋愛モノか。真犯人はお前だ的内容を期待して読了したが、推理小説を読み慣れている方には少し物足りないかも。カイアという沼地近くに長年住む女性が主人公。父はどうしようもない飲んだくれ。母は亭主の暴力に耐え切れず蒸発。兄弟達も絶望して家を出て行く。唯一の救いは幼馴染みとの交流だけ。だがその彼まで自分を残し都会の大学へ進学。悲しみに追いやられたカイアに近づく町の若者。その男が沼近くの櫓から落下して死亡した。事故か他殺か。結末は切なかった。自然観察が好きな方は是非。 2024/05/08
塩崎ツトム
93
世の中には「殺す・殺される」の関係に着陸させなければいけないものだってあるのである。それがわからない人は共同体に守られている人であって、多分、歴史的にはカイアみたいなアウトロー(本人の望む望まないは置いておいて)が世の大半だったのだろうとは思うが、じゃあ、共同体と、それの構成員が牙を剥いてきたときには? 野生と人間の違いは?2024/05/25
Cinejazz
91
ノ-スカロライナ州の湿地帯で、家族から見捨てられ、ひとり置き去りにされた6歳の少女<カイア>。 ・・・いつか、帰って来てくれるはずの家族を待ち焦がれながら、〝湿地の少女〟と村の人々に蔑まれ、孤独と偏見に耐えながら、生物が自然のままの姿で生きる「ザリガニの鳴くところ」 に思いを寄せ暮らしていた。 ・・・やがて、思春期の少女の夢と希望を無惨に打ち砕いた、村の青年の不審死事件の容疑者となったカイア。 過酷な環境下のカイア、身を焦がす疼痛に耐えるカイア、その凄まじい生きざまに魂を打ちのめされ、感涙に咽び泣く↓2024/05/01
ぷらった
86
後書きで驚いたのは,本書は作者が69歳の時に出版されたということです。素晴らしい。男性の不審死から始まります。殺人事件を扱う推理小説や警察・探偵エンタメはあまり好きではありません。しかし読み進めていくうちに,ピュアな題材が多岐にわたり,どんどん引き込まれていきました。湿地帯で生活する貧乏白人,家族に見放されたカイヤの物語です。動物学者の作者の感性で描かれるシーンが印象的です。全く別の物語ですが,小舟シーンが常に登場するのでアーサー・ランサム作の「ツバメ号とアマゾン号」を思い出しました。次作に期待します。2025/01/05