内容説明
ノースカロライナ州の湿地で青年の遺体が見つかる。村の人々は「湿地の少女」カイアに疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられ、人々に蔑まれながらたった一人湿地で生き抜いてきたカイアは果たして犯人なのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさか
59
2018年8月刊のWhere the Crawdads Singを翻訳して、2020年3月早川書房刊。2023年12月ハヤカワNV文庫化。面白いタイトルだなぁと気になっていたら、映画化もされていた。手に取ると地味で、ストレートで、少し長くて、たいへんでしたが、ラストのちょっとした(いや、かなりかな)驚きもあって、悪くない読書体験でした。2024/02/16
moonlight
37
人里離れた湿地に幼い頃からたった1人で暮らすカイア。ネグレクト、DV、貧困、差別、過酷な状況に読んでいて気が滅入り、細やかな大自然の描写からはカイアの世界が真に孤独であることが伝わる。親切にしてくれた人が去って行く辛さは彼女をさらに孤独にし、悲劇を招く。ラストに静かな驚きが二つ…その事実により物語全体に厚みが増すような印象だった。2024/01/25
Roko
35
この物語の中で、ある飲食店では黒人は店の小窓からしか買い物ができないとか、裁判所の判事が「自分の法廷では肌の色や宗教に関わらず、だれでも好きな席に座っていい」と宣言したとか、ここが人種差別が色濃い地区であることを強く感じました。 カイアが町から離れた湿地から離れようとしなかったのは、もちろんそこに住む生物を愛しているからですけど、人間を差別することを当たり前だと思う人たちとは距離を置きたいという思いがあったのではと思います。2024/04/26
ここぽぽ
35
湿地の情景、動物の生態、少女の成長、事件、年代が進むにつれ、見えてくる世界。話の綴り方も無理なく読めて、みずみずしい自然に対する傾倒、穏やかな野生への回帰が感じられる。自然と少女、彼女を見守る人との触れ合いが生き生きとしていて、ノスタルジック。湿地の生活が厳しくとも、その場所の魅力を伝え、住み続けるカイア。彼女の執筆した図鑑、著作を見てみたい。2024/01/18
uuuccyan
35
アメリカ東部の湿地帯の村で、青年の遺体が発見される。そして家族に見捨てられてたった一人で生きてきた『湿地の少女』カイヤが逮捕される。誰が殺したのかの捜査の過程と、カイヤがどうやって生きてきたのかが交互にに描かれいく。ついカイヤに感情移入してしまい、無罪判決には涙がでた。しかしそれで終わりではなかった。自然界の中で種の保存の為に、キツネの母親やホタルやカマキリのメスの行為が人間のカイヤのDNAにも刻まれていたという事か。2023/12/20