内容説明
「蒙昧」の昭和の空気を描く谷崎潤一郎賞受賞作
大阪万博、ロッキード事件など、戦後を彩る事件をそれぞれの渦中の人物の視点で描く、芥川賞作家の最新長篇にして、文体の真骨頂。
※この電子書籍は2020年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
メセニ
18
9/10。200頁ほどの分量の中にあの時代の匂いや気分のようなものが凝縮されていてとても読み応えがあった。グリコの事件にしても万博にしても日本初の五つ子誕生にしても横井さんの話にしても、自分の世代には生まれた頃の話かそれ以前のことばかりで、それはテレビで見たことのある昔こんなことありました的な事柄でしかないのだけど、戦後史の様々に立ち会った人々の目を通した淡々とした作者の語りにはたしかに、知らないはずのあの蒙昧であった時代の空気がもちろん想像込みで感じられ、無性に興味を掻き立てられる驚きと面白さがあった。2026/02/28
フリウリ
10
句点ではなく読点を多用して、改行少なく進む「文体」は、最近の保坂和志氏や、プルーストの井上訳を連想しました。出来事に語らせるという意味では、日本国(あるいは日本語の社会)を主人公にした、私小説のように読めました。ただ、私小説のように強みと弱みが併存していて…、つまり、覗き見や噂話としてはおもしろいけれど、どこか他人事のように聞こえ、通念への疑いを揺さぶるというようなことはない、という感じがしました。図書館の新刊コーナーで発見した初読みの作家さんでしたが、他の作品も読んでみようか?と思います。72024/01/07
Foufou
7
読み始めるや、これはなんなんだと戸惑いつつも、あれよと引き込まれて、イッキ読み。大変面白い試みだし、随所で心揺さぶられました。ただ、同時代を生きる人間としての共感では全くない。よく知られた史実を語りながら、シームレスに個の物語へ接続するありように、エキサイトするのですね。いや、これ、現代の話なんですよね。小説の力の復権、とでも言いたくなるような事態が散見される。この作家はどこから来てどこへ向かうのか。2024/01/15
ギブソン
5
これまでに感じたことのない読書経験だった。未知の作者で、始めはセンテンスの長い文章に戸惑ったが、グイグイと読ませる力に驚いた。川上弘美さんの解説が見事。2024/01/08
澤唯
4
いい意味でとても不思議な本だった その不思議な感じを川上弘美さんが丁寧に解説してくれて助かった いつかまたじっくり読んでみたい2024/03/15
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