内容説明
宇宙空間でのワープに際して生じる、空白の七十四秒間。この時間の存在を認識し、襲撃者の手から宇宙船を守ることができるのは、マ・フと呼ばれる人工知性だけだった――ひそやかな願いを抱いた人工知性の、静寂の宇宙空間での死闘を描き、第8回創元SF短編賞を受賞した表題作と、独特の自然にあふれた惑星Hを舞台に、乳白色をした8体のマ・フと人類の末裔が織りなす、美しくも苛烈な連作長編「マ・フ クロニクル」を収める。/【目次】七十四秒の旋律と孤独/マ・フ クロニクル/一万年の午後/口風琴/恵まれ号 Ⅰ/恵まれ号 Ⅱ/巡礼の終わりに/文庫版解説=石井千湖/*本電子書籍は、『七十四秒の旋律と孤独』(創元SF文庫 2023年12月初版発行)を電子書籍化したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさか
27
2017年7月創元SF文庫刊行き先は特異点:七十四秒の戦慄と孤独、2018年12月東京創元社刊Genesis一万年の午後、2019年6月webミステリーズ口風琴、2020年12月東京創元社刊七十四秒の戦慄と孤独:恵まれ号Ⅰ、恵まれ号Ⅱ、巡礼の終わりに、の6つの人工知性体マ・フの連作短編を2020年12月創元日本SF叢書。2023年12月創元SF文庫化。表題作の七十四秒〜が設定、展開とも抜きん出ていて猫のメアリー・ローズへの想いと彼女のしぐさが良い。他の5編は、あまり楽しめなかった。2025/02/28
柊渚
25
破れていく空気と火花の残像。宙を舞う、かつて彼だったものの欠片。透明な硝子の瞳に映りこんだそれは鮮烈な美しさを放っていた。人間によって創られた人工知性〈マ・フ〉。絶滅したと思われていた人間と彼らがふたたび出会ったことで、物語の歯車は壮大に廻り出す。SFでありながら、まるで詩篇のような。ひどく脆く残酷で、けれどもなんて美しい世界。読後に訪れる静寂が心地よくて温かくて、涙が出ました。とても、とてもよかった。大好き。きっとこの先何度も何度も読み返したくなるであろう、宝物のような物語がまたひとつ。2024/01/13
ふりや
20
某アンソロジーで表題作だけは読んでいたのですが、その後に刊行された単行本を読もう読もうと思っている間に文庫化されたので、この機会に購入しました。表題作とその後に続く連作短編を含め、とても素晴らしい作品でした!「マ・フ」と呼ばれる人工知性の、気が遠くなるような長い年月の活動の記録、そして人間との交わり。徐々に明かされる秘密や、連作ならではの仕掛け、終わり方も美しいです。心に沁みました。ヒトではなく人工知性の側から物語るという形式も非常に面白かったです。同じ著者の『わたしたちの怪獣』もぜひ読んでみたいです。2023/12/14
秋田健次郎
15
壮大な大河SF。機械生命である「マフ」目線で描かれる物語はAIものでありがちな、硬派で論理的な描写ではなく、むしろ詩的で精緻な心理描写が目立つ。加えて、人間ドラマも魅力の大きな部分であり、AI系SFとは思えない切なさや虚しさなんかの情緒を感じられる。読み始めた時は文学寄りな作風の印象だったが、読み進めていくとちゃんとエンタメ作品としての展開もしっかりしていて、純粋にストーリー展開も楽しめた。程よい伏線の具合から、心地よい読後感まで、純粋に読んで良かったと思えるSF小説でした。2024/01/05
yupaki
10
ヒトと暮らすのは難しい。近未来、従来一瞬で済んでいたはずのワープに実は空白の七十四秒があり、それを認識できるのはマ・フと呼ばれる特別なアンドロイドだけであることがわかる。ヒトが無防備になる七十四秒を守る一人のマ・フの短編とマ・フだけの暮らしからヒトが介入し始める長編の二作が一冊になったSF小説。【感想】短編はサクッと読めて、心を持ち始めるマ・フの虚しさが出てて良かった。長編側は中盤までぐだるけど事件が起きてからはとんとん拍子で映画見てるみたいな感覚。でもやっぱSFならファンタジーよりが好きだな。2025/07/21
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