内容説明
聖書の記述には、現代の我々からすると荒唐無稽に思えるエピソードが少なくない。いったいどの程度まで史実を反映しているのだろうか。文献史料の研究にはおのずと限界があり、虚実を見極めるには、遺跡の発掘調査に基づくアプローチが欠かせない。旧約聖書の記述内容と考古学的知見を照らし合わせることにより、古代イスラエルの真の姿を浮かび上がらせる。本書は現地調査に従事する研究者の、大いなる謎への挑戦である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
58
旧約聖書の物語は、果たして史実か。場合によっては「背教的」と評す向きもあるようだが、世界的には、考古学の結果を受け入れる趨勢であるという。綿々と受け継がれてきた書物が、粘土板・碑文のような一次資料と齟齬をきたすのは、年月の結果だけとは言えない。世界には、比較する資料のない伝承が他にもあるだろうが、資料を無批判に受け入れることは慎むべきだと思う。2016/06/04
サトシ@朝練ファイト
45
レニングラードと死海とをそういう風に見るのか。単純なことだけどなるほどと納得する事が多かったです。2013/08/08
へくとぱすかる
42
再読。文字のない時代の伝承は、現代に近い例で考えても変形を免れないものであるようだ。そもそも歴史自体、史実を正確に書くべきだという考えが当たり前になったのも、さほど古いことではないらしい。文献との差を埋めるための考古学ではあるが、発見の偶然性にも左右されるので、なかなか解決に至らないことへの著者のもどかしさも随所に感じられる。発掘の進展を祈りたい。2018/01/06
Koning
42
今時の聖書考古学の成果を一般向けにという新書。とりあえずこの分野学問分野として「聖書考古学」と言わない風潮もあってその辺の説明や事実が聖書の記述と違っても信仰は揺るがないでしょ?というファンダメンタリストやカルトさんたちへの一言もあってやはり色々と気を使わないといかんのねと思わざるを得ない。1~2章で聖書考古学の手法等も説明して第3章から実際の聖書の記述と史実の比較に入る。族長時代、カナン進入、王国時代、ヘレニズム期と続き、まとめという構成。2013/03/26
i-miya
40
2013.04.28(読んだわけではありません)日経新聞H25.04.28読書欄から。 2013.04.28 (副題)遺跡が語る史実。 (長谷川修一) 1971生まれ、盛岡大学准教授。「史実との境界線を明らかに」 =橋爪大三郎著。 どこからどこまでが史実なのか。 中東一帯の遺跡を発掘して、その証拠を集めるのが聖書考古学。 神の言葉だから、キリスト教徒はそのまま信じてきた。 19世紀から発掘、進み、ノアの洪水が、バビロニアの洪水神話に由来、判明。 2013/04/28