内容説明
「天地創造」をはじめとして、旧約聖書に描かれた物語は現在、その多くが神話と見なされている。だが、他方で「バビロン捕囚」のように、世界史の教科書で史実として扱われているものもある。本書では「ノアの方舟と洪水伝説」「出エジプト」「ダビデとゴリアトの一騎打ち」など七つの物語を取り上げ、その史実性を学問的に検証。物語に込められたメッセージをも読み解き、聖書が秘めた豊かな世界へと読者をいざなう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
49
聖書(本書の場合、旧約の方)に述べられている出来事は、果たして史実なのか。ノアの方舟については、粘土板に保存されたメソポタミアの洪水物語が起源だと、容易に知れるが、出エジプトについては、かなりのページを割いて、歴史上に位置づけることが可能なのかどうかを検討している。どんどん年代をさかのぼる考古学に対し、史書の成立はどんどん年代を下る傾向は、世界中にあるようだ。2016/05/31
へくとぱすかる
39
再読。考古学の成果と比べることで、さらに謎が深まった感じがある。新しい資料が現れない限り、史実ともフィクションとも判断がむずかしく、年代にも疑問がある出来事。それにもかかわらず現行の日本の教科書に、史実として年代まで明記されているのは、いかがなものか。聖書の謎を解くには、エジプトやメソポタミアの歴史全体からふりかえる必要があることが、よく理解できる。2018/01/07
Koning
33
そういや、出エジプトって高校の歴史教科書に載っちゃってるのか(笑。という驚きもありつつ古代の文書の読み方の一端を示してくれる結構な良書。時々編集仕事してないだろ!な細かいミスはあるんだけど、古代オリエントオタ的読み方をまるっと肯定された気分になって内心ニマニマしてしまった。ということで、個人的にはそういう捉え方が普通だよねだったんだけど、「聖書」とか「歴史書」として読んでた人にはショッキングな本かもしれんですね。2017/01/20
Francis
23
「旧約聖書考古学」の続編。旧約聖書のノアの方舟、出エジプトなどの出来事が本当にあったのか考古学的見地から考察。エピソードが少ないのが不満だが、出エジプトなど実際にあったか疑わしいエピソードであってもではなぜそれが旧約聖書と言う書物で長い間語られてきたことの意味を考えることはとても重要ではないかとの著者の考えに強く同意する。旧約聖書を読み直す時にこの本の内容を思い起こしながら読むことでさらに理解を深めてみたい。2018/06/17
鐵太郎
21
旧約聖書に書かれたさまざまな物語は、単なる神話であると共に、時に歴史的史実として世界史に記されることがあります。それでいいのか。この本は、その風潮の中で「ノアの方舟」から「ヨナの物語」まで七つの物語を取り上げ、史実性を学問的に検証したもの。 ──《聖書本文が史実と異なるとき、それは、その記述の背後に潜む、記述をした側の人間の意図と、その人間が属する当時の社会の需要を知るための鍵を見つける好機なのである。》 なるほど。2024/07/11