内容説明
教育格差は絶対悪なのか?
機会の平等が実現された先にある「本当の地獄」とは?
【内容紹介】
経済的余裕のない家庭の子どもに勉強を教える「無料塾」は、学歴が収入や地位に直結する現代で子どもを救う存在となっている。
一方、無料塾は重大な問いを社会に投げかける。生育環境による教育格差を埋めることは重要だが、受験戦争のさらなる先鋭化に加担することにならないか。また、仮に機会の平等さえ実現したら、そのなかで競争に負けた者は自己責任でいいのか。
さまざまなタイプの無料塾への取材からそれぞれのジレンマを明らかにし、これまでの教育格差の議論で見落とされてきた点をあぶり出す、迫真のルポルタージュ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kan
35
20年以上前、東京のとある区の事業の無料学習室の学生チューターとして1年間働いた。対象は通塾していない、近隣中学3校の3年生十数名。週3回夕方の2時間、be動詞や分数の加減乗除や作文などの学習支援をした。学習に困難を抱え、機会に恵まれない生徒の支援をすることで生徒の進路実現と格差の縮小に貢献していると思っていた。本書の指摘「無料塾の存在は宿命的に矛盾をはらむ」には思い至らず、自分も学歴や能力主義の枠組みで価値判断していることに気付かされた。そうは言っても、教育も社会構造の一部だし、どうすればいいのか…?2024/09/10
りょうみや
25
3部構成。最初が実話の元にした小説で貧困家庭の生徒と運営者両方の立場から無料塾というものを眺める。「勇者たちの中学受験」もそうだがおおた氏の小説は好きだ。第2部が様々な無料塾のルポで単に子供の学力を上げればよいという問題ではなく、誰かが上がれば誰かは椅子を失うしどこまでいっても問題は噴出し格差は解消しない。そもそもこの取り組みは学歴主義という既存のレールを強化するだけとも言える。第3部が専門家との対談でこれらの問題を考察する。教育社会学者の松岡氏の議論はやはりキレがある。2023/12/21
Ducklett21
18
無料塾の現状と本質的な課題について 僕自身も裕福ではなかったので、無料塾のコンセプトを聞いた時にすごいなと思ってこの本を手に取りました。運営関係者が想像を遥かに超える聖人で頭が下がりっぱなしでした。一方で学力が収入に直結する社会という歪みを無料塾はむしろ加速しているという指摘はなるほどと思った。しかし個人的には学ぶことは学歴という卑小なものだけではなく、人生を豊かにしてくれる生きる本質だと思っているので、無料塾でその楽しさを伝えることができたらいいなと思う。2024/08/21
おいしゃん
15
このニッチなテーマで、ここまで社会構造を語れるとは、とビックリ。2024/10/11
coldsurgeon
10
学習機会が損なわれている子供を救いたいという想いで無料塾が存在し、そのルポルタージュを通じて見えてきたのは、変革しなければいけない日本社会。日本が教育格差に自覚的な社会になることが大切だが、それだけでは終わらない。本人にはどうにもできない初期条件があり、高い学歴を得る難易度に差がある。教育機会格差(家庭間、学校間、地域間)、社旗経済的地位も要因。それらを何とか解消できたとしても、遺伝的要因はどうしようもなく、むき出しの競争社会を肯定すれば、優性思想に陥る。学歴や経済力の違いが格差に見えない社会がよいのか。2024/01/27
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