内容説明
あれから何年経ったのだろう。あれって、いつから? どのできごとから?
日本を襲った二つの大地震。未知の病原体の出現。誰にも流れたはずの、あの月日――。別々の場所で暮らす男女三人の日常を描き、蓄積した時間を見つめる、著者の最新長編小説。
始まりの前の続き、続きの後の始まりを見下ろし、あの中のどこかにわたしもいる、と思った。(一穂ミチ・作家)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
161
何年ぶりかの柴崎作品。良い、とても好かった。コロナ禍の3人の日常が淡々とあった。そこには震災やそれ以前、TVやSNSで知る戦争もある。時間は誰の上にも平等なのに同じ経験や感覚では無い。それぞれの今を生きているんだ。そこに私の営みもあった。これからも在る。続きが続くだけで終わりはないのだなぁ・・ポーランドの詩人の詩がとても好く効いている。そして、本作のタイトルも実に良い。読み友さんの素敵なレビューに誘われて良い読書時間だった。2024/04/26
ででんでん
92
皆さんに読んでほしいなと思った本。自分とは年齢も性別も異なる3人が、それぞれにコロナ禍を生きている。コロナ禍だけではなく、数々の震災、そして戦争…そしてもちろん日々の日常を生きる3人の仕事や家族関係。捉えきれないほどの事が起こるのが、生きているということだ。私達の日々はまさに「なにも終わらないのに、次々始まって、忘れていくばっかりで。」自分が知らない間、忘れてしまっている間にも世界中で、いや日本でもいろんなことが続いていて、そしてまた始まっていく。「続きと始まり」のなか、傍観し、かきわけて自分も生きる。2024/02/15
hiro
87
WHOのパンデミック宣言がでた20年3月から22年2月までの間、パートで働く優子、調理師の圭太郎、フリーカメラマンのれい、離れた所に住む男女3人が順番に主人公を務め、それぞれの職場・家庭の問題を含めコロナ禍の中での日々の生活が描かれているだけでなく、更に過去の二度の震災を振り返り、また新たな戦争も含めた不安定な時代が描かれている。まだ2年から4年前を描いている作品だが、読み終えて忘れかけていることもあって自分自身に驚く。最後には3人の繋がりと題名にスッキリできた。芸術選奨文部科学大臣賞受賞も納得。2024/03/30
のぶ
86
柴崎さんは初めて読んだが、確かな筆力を感じた。石原優子、小坂圭太郎、柳本れい。この3人の2020年から2022年までの日々や思いがそれぞれ記された小説。何か特別な出来事が起こる訳ではなく、毎日、同じことの繰り返しのような日々が描かれる。読み進むと、そこに何ともいえない閉塞感が漂う。3人の共通点は、問題のある親を抱えていること、そして、ポーランドの詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカの詩集「終わりと始まり」と出会ったことがあること。淡々とした文章の中にも、行間に深いものが込められていた。読み終わって感銘を受けた。2024/09/05
なゆ
77
コロナ禍の不安で先行きの見えない日々。きっと住んでる場所で、職業で、家族構成で、感じ方や大変さも違う。10年後、20年後.この日々をどんなふうに思い返すのだろう。こうして読むと忘れかけてる事もあって、そんな自分に驚く。「なにも終わらないのに、次々始まって、忘れていくばっかりで」パート従業員の優子、飲食店で働く圭太郎、独身フリーカメラマンのれい。それぞれの視点であの頃をなぞる。コロナ禍だけじゃない、阪神淡路や東日本の大震災をはじめ、戦争も災害も非日常は突然始まり終わりはいつなのかわからない、ということ。2024/01/28
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