内容説明
デマゴーグ政治の跋扈や国家独立問題、そしてコロナ禍と、世界は分解と混乱を極めている。それは、近代国家やそのもとでの「民主主義・自由・平等」のもつ欺瞞が限界を露呈したからではないのか。ゆきづまる近代的世界を超えて、どのような未来社会を構想するのか。その答えを、伝統社会、そして農山村で活発化する伝統回帰の動きのなかにみいだす。自然と人間の関係、労働や共同体をめぐる独自の思想を構築してきた在野の哲学者が、米トランプ政権発足直後の2017年2月に開催された「東北農家の二月セミナー」で語った政治・社会論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
43
以前から、著者の内山節先生の考えに触れる度に、自分の足下にありながら、普段顧みることの少ない本来の自分の姿を思い浮かべ、その破れの指摘に心から納得して、明日に備えようという気持ちになるのだった。本書でも、例えば西洋の社会の構成員は生きている人間だけなのに対し、日本の場合は、まず自然と人間が作る社会であり、人間については死者を含めるという。また、本質的なものは実態ではなく関係なのだと言われる。そして関係作りの始めに挨拶があるという。仏壇に手を合わせ、家族に挨拶するところから始まる。社会のあり方指南の書。2021/04/10
pirokichi
17
職場のトップが「健全な民主主義社会の実現…」とあまりにもよく口にするので、『民主主義を問いなおす』というタイトルに惹かれ手に取った。知人が著者のファンなので私も著書を讀みたかった、というのもある。特に第3講「関係的世界への回帰」が胸に響いた。「神は確かに存在する」のでなく「関係を結んでいるから神様はいる」には納得。また「「私」もまたいろいろな関係の総和」では先月読んだ平野啓一郎さんの「分人」を思った。本書は「東北農家の二月セミナー」での著者の報告を3部作としてシリーズ化したもの。続く2、3も読んでみたい。2021/04/15
半崎クジラ
0
ものごとを問うときは、言葉を大切にしていかないといけない。「民主主義」についても、僕が理想として漠然と描いている姿と、それがいかなる理想のもとに掲げられてきたか、については隔たりがある。物事を「足元」から考え直さなきゃいけない時代が来ているという感覚があって、それは「根」「コミュニティ」と言った言葉からなんとなくみんなの中で共有され始めているのかな、と思う。国家というシステムの現在。関係ありき、というのもそうだが、現実問題として実体というものに立ち向かうなら、それは実体の側から解体すべきなのかも、とも。2024/04/24