内容説明
近いうちにこの切っ先が、私の手の内で何人かの血を吸うであろう……。
Q大附属病院に入院をしていた「私」は、レントゲン室に勤務する異母弟から余命宣告をされる。
理不尽な運命を豪快に笑い飛ばした「私」だったが、生命が尽きるまでに成し遂げなければならない使命があった。
「私」は背広の内ポケットに家伝の短刀を忍ばせると、恐ろしい復讐の旅に出るのであった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
53
7編の短編集。夢野久作さんを文庫で読めるのは角川文庫でしかないかと思います。そしてカバー絵がいいんです。米倉斉加年の絵が妖艶で素敵~。久作さんは乱歩さんより5歳年上ですが、乱歩さんは1923年29歳でデビューしたのに対し、久作さんは1926年37歳で文壇デビュー。乱歩さんの影響があったのだろうか、本格推理小説ではなく、変格推理小説という新しいスタイル。それがいいです。「冥途行進曲」は遺稿だそうですが、他の短編は1932年頃の秀作揃いでした。題名の「冥途行進曲」は2週間の余命宣告を受けた青年。2025/07/01
おにく
33
もしかすると作家さんの文章のリズムというのは、その作家さんの話し方に類似しているのではないでしょうか?だとしたら、夢野久作氏の話しぶりは、結構せわしなかったものと想像しています。“ドグラ・マグラ”など、癖のある作品を残した作家さんですが、その息をつかせぬ文章で、難解でジリジリとした他の作家さんを読んだあとなどには、夢野氏の作品が恋しくなる。初めて読んだ“冥土行進曲”も迷走していて楽しかったですよ。2024/10/22
柊渚
24
禍々しい狂気と一人称視点の独特の文体に触れ、久しぶりの夢野久作をたっぷり堪能しました。現実か虚構か、軽妙な語りに絡めとられ混濁する感覚がなんともいえず心地よく。恋人を美しすぎる故に殺害してしまう『縊死体』は、作者の癖が詰め込まれていて良きです(小声) 夢野氏の物語ではお酒が苦手な人に無理やり飲酒させると、高確率で惨劇が起こってしまうのでお気をつけください笑。2024/11/24
たぬ
17
☆3.5 どうなってるんだ「爆弾太平記」は。伏字だらけじゃないか。おのれは筒井康隆か。こうも伏字だらけだと笑いを取るためにあえてそうしたんじゃないかとすら思えてくる。8編どれも現代小説を読みなれたまともな神経の読者なら意味ワカンネ状態になっても不思議じゃないです。私は『ドグラ・マグラ』で鍛えられてたからそこまでのダメージは負わなかったけどね! アッパー系キ印が多く出てくるのも夢野久作作品の特徴だけど幼名は杉山直樹でめっちゃフツーだったりする。2025/08/16
Porco
11
1編目の「狂人が笑う」が大多数の人が認識しているだろう夢野久作作品らしさを自分も感じ、期待に読み進めたが怪奇幻想という要素はそのあと続く作品群を終えるたびに、掌編だが話のキレがある「縊死体」や女を争う鉱夫の怪奇も織り混ざった「斜坑」など中々面白いと思えたが、いかんせん自分の知識から期待していた夢野久作作品として想定してた作品群とは、出されたものが異なっていたため残念な気持ちが多く出てしまった…読む前の期待値が高すぎた。2023/12/03