内容説明
長年の奴隷解放戦争に疲弊した惑星ウェレルで、宇宙連合エクーメンの使節ソリーが祭りの日に攫われこの地の真実を垣間見る「赦しの日」をはじめ、圧倒的想像力で人種、性、身分制度に新たな問いかけをする《ハイニッシュ》世界の四つの物語。ローカス賞受賞作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
36
久しぶりのル・グィン界。惑星ウェレルと植民惑星イェイオーウェイの戦いを通じて、奴隷制度、価値観の大変動を写し取った社会的SFでありながら、愛と憎しみ、過去の相克をテーマにしたすばらしいドラマでもある、という無味乾燥なコメントでいいのだろうか?汚職により失墜した元政治家を巡る赦し「裏切り」、男女平等を実現した新世界と伝統社会の価値観の相克「赦しの日」、伝統社会に育った男の星間をわたる旅「ア・マン・オブ・ザ・ピープル」、奴隷に生まれた女性の想像を絶する旅「ある女の解放」を収録。アメリカ史を裏返したような ⇒2024/01/13
宇宙猫
21
★★★ 「裏切り」殆ど覚えてないけど既読の気がする。一番良かったけど、背景がよく分かってなかったからかも。4編読むと、またじわじわくる。「赦しの日」既読。前ほどいいと思わなかったし、4編のなかで浮いてるかな。「ア・マン・オブ・ザ・ピープル」「ある女の解放」30年前ならインパクトがあったと思うけど、今となっては有りがちかな。ル・グィンだから期待しすぎたのかも。2024/06/18
ふりや
16
ル・グィンの作品は絶版が多く手に入りづらいイメージがありますが、こうして新刊が読めるのは嬉しい限り。またこのタイミングで過去の作品も電子で復刊されるようです。本作は「ハイニッシュ・ユニバース」と呼ばれる宇宙年代記に連なる短編集。二つの国に於ける奴隷制度をメインに、人種や性差の問題などをSFの舞台の上で描き切る筆致は圧倒的で、さすがル・グィンという感じ。短編が相互にゆるやかに繫がっているのも面白いです。また、巻末の設定資料の分量と細やかさも凄い。こちらを先に読んでから本編に入っても良いかもしれません。2023/11/28
稽子
14
★★★ SF、連作短篇集。設定的にはSFなのだが、読書感はファンタジーに近い。話が進む毎に誰が誰やら、情報が増えて設定が分かりにくくなっていくため、初めの第一話が一番印象が良い。さすがのル=グウィン作品ではあるのだが、他の人にオススメできる作品かというと、そうでもない。翻訳は『アルジャーノン(略)』や『闇の左手』も担当した小尾芙佐で読みやすい。2024/08/01
Mc6ρ助
13
かつてル・グィンさんの本を面白いと思って読んだのはどの程度ミエだったのだろう。なかなか読み進められない。こちらが年をとったのか、見かけ上単純になってしまった世界に馴れすぎてしまったのか。憲法が慣習法と聞きかじりその概念が熟慮民主主義を殺してきたのかと愕然としている爺さまは、それでもこの世界が豊穣であることに心打たれるものの、僅かに一つの赦しの道しか辿ることができなかった。2024/05/13
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