内容説明
優秀な二人の兄が相次いで病死、長兄の子・伊周との政争にも勝利した道長。やがて一条天皇のもとへ長女彰子を入内させ、のちの後一条天皇が生まれ、権力を握る。彰子に仕えた紫式部や清少納言など王朝の才女たちも鮮やかに描いた王朝歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
60
上巻は道長が出世していく過程で面白かったが下巻は息切れしてだらだら読んだ。これは永井さんではなく平安時代に責任があると思う。兄2人が都合よく病死し、位人臣を極めると、道長には為政者として理想があるわけでもない。位を保全するために倫子と明子が次々生んでくれる子供たちを入内させ、皇子誕生を祈るばかり。病気も火事も政敵の呪詛と考え呪詛と祈祷に縋るだけ(※1)。姉の詮子、妻の倫子、娘の彰子、堂々たる女性の像はとても良い。婿取り婚時代の余裕の風格。紫式部は噂話でちらりと触れられるだけだった。2024/02/16
Book & Travel
32
兄達の死により出世の道を掴む道長。傲慢な権力者ではなく、平凡児が平衡感覚と幸運で、浮き沈みを繰返しながら権力を掴んでいく様子が、細やかな心情変化と共に描かれ、とても面白かった。妻の倫子、姉の詮子、娘の彰子ら存在感の大きな女性達、伊周・隆家一族の盛衰、一条天皇と優れた側近・行成、うるさ型の実資など、登場人物が個性豊かに描き分けられ、華やかな王朝絵巻の裏の生々しい人間模様が印象に残る。相次ぐ呪詛や火事、突然の死で運命が変転する貴族の世界も大変だ。著書の歴史考察の深さを改めて感じる読み応えのある良作だった。2024/02/29
鐵太郎
24
政界の第一人者にのし上がった道長を頼もしげに眺める正妻・倫子から始まり、意欲や野心に疎い貴族の末子が成り上がっていく様子が描かれます。最大のライバルとなった甥の伊周の失脚を好機とし、さまざまな幸運をうまく利用してさらにのし上がり、娘二人を中宮に押し込むことで人臣を極める様子。しかし描かれるのは、ギラギラしたところがない道長ではなく、女性たちのネットワークと、権力の陰の行動力。こういう考え方を1984年の時点で世に問うたのは永井さんが最初ではないのだろうけど、あまりメジャーにならなかったのが不思議。2024/01/30
あまね
22
下巻もとても面白かったです。不運や思いがけない事件に巻き込まれるとオロオロし、大騒ぎする道長。『この世をばわが世とぞ思ふ望月のかけたることもなしと思へば』からイメージしていた尊大で豪放磊落な道長からはかなりギャップがあって楽しめました。上下巻ともに500ページを越える大作。久しぶりに読んだ永井さんですが、その実力を堪能しました。他の作品も読みたいです。2024/03/21
けんけんだ
17
藤原道長の時代、悪いことも良いことも神頼みだったのは納得。精神的に追い詰められて病んだとき出家するとプレッシャーから解放されて回復するとか。2024/01/11