講談社現代新書<br> ダーウィンの呪い

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講談社現代新書
ダーウィンの呪い

  • 著者名:千葉聡【著】
  • 価格 ¥1,265(本体¥1,150)
  • 講談社(2023/11発売)
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  • ISBN:9784065336915

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内容説明

ダーウィンを祖とする進化学は、ゲノム科学の進歩と相まって、生物とその進化の理解に多大な貢献した。一方で、ダーウィンが提唱した「進化論」は自然科学に革命を起こすにとどまらず、政治・経済・文化・社会・思想に多大な影響をもたらした。そして、悲劇的なことに、進化論を曲解した彼の後継者たちが「優生思想」という怪物を生み出した。〈一流の進化学者〉たちによって権威づけられた優生学は、欧米の科学者や文化人、政治家を魅了し、ついにはナチスの反ユダヤ思想とつながり「ホロコースト」という悲劇を生み出すことになる。

第一線の進化学者の進化学の歴史に詳しい著者は、ダーウィンが独創した進化論は、期せずして3つの「呪い」を生み出したと分析する。「進歩せよ」を意味する〈進化せよ〉、「生き残りたければ、努力して闘いに勝て」を意味する〈生存闘争と適者生存〉、そして「この規範は人間社会も支配する自然の法則だから、不満を言ったり逆らったりしても無駄だ」を意味する、〈ダーウィンもそう言っている〉である。順に、「進化の呪い」「闘争の呪い」「ダーウィンの呪い」である。

本来、方向性がなく、中立的な進化が、なぜひたすら「進歩」が続くと信じられるようになったのか。ダーウィンとその理解者、そしてその志を継いだ後継者たちが、いかにして3つの呪いにかけられていったのか。稀代の書き手として注目される著者が、進化論が生み出した「迷宮」の謎に挑む。

第一章 進化と進歩
第二章 美しい推論と醜い
第三章 灰色人
第四章 強い者ではなく助け合う者
第五章 実験の進化学
第六章 われても末に
第七章 人類の輝かしい進歩
第八章 人間改良
第九章 やさしい科学
第十章 悪魔の目覚め
第十一章 自由と正義のパラドクス
第十二章 無限の姿

目次

一章 進化と進歩
進化に方向性はあるのか/「マジック・ワード」エヴォリューション/進歩は光、衰退は闇/『種の起源』以前のエヴォリューション/ダーウィンの揺らぎ/19世紀の世界観が生み出した「進化の呪い」/父親との対決/ダーウィンに影響を与
えた経済学者たち/虚無の世界観/自然選択の仕組み/自然選択で「人間らしさ」は生まれるのか/集団選択と「呪い」の融合
第二章 美しい推論と醜い
「適者生存」をめぐるミステリー/妥協がもたらした深刻な弊害/社会進化論に対する誤解/スペンサーは適者生存を重視していなかった/植民地支配と進化論/明治時代に輸入された「適者生存」
第三章 灰色人
ベストセラーではなかった『種の起源』/サイエンスライターが広げた「進化論」/自然選択を圧倒した獲得形質論/「闘争の呪い」を呪詛に変える改変/進化論と道徳/恐るべき未来
第四章 強い者ではなく助け合う者
フェイクニュース/革命家クロポトキン/クロポトキンvs.ハクスリー/ダーウィンからラマルクへ傾斜/自然選択と利他性は両立するのか/「道徳と倫理」と自然選択/ゲノム解析からわかった「道徳の遺伝子」/ゲノム編集で「超人」を作
ることが許されるのか/進化を進歩に変える試み
第五章 実験の進化学
スペンサーvs.ヴァイスマン/ネオ・ダーウィニズム/ルイ・アガシの弟子たち/ネオ・ラマルキズムの台頭/獲得形質論争/「山賊」が集うラボの革新的研究/現代進化学の体系を作ったドブジャンスキー
第六章 われても末に
ダーウィンの従弟/回帰の発見/二人の生物学者の友情、そして破綻/現代統計学に礎を築いたもう一人の天才/生物学史に残る大論争/同じものを見ていた/未来を先取りしすぎた男/数学の天才を支えたダーウィンの息子/現代進化学がもたらした光と闇/打ち砕かれた楽観論
第七章 人類の輝かしい進歩
ヒトラーの専属医師が遺した言葉/ナチスのお手本/「呪い」が生み出した優生思想/恐るべき閃き/天才統計学者が継承した優生学/科学を捻じ曲げたピアソン/優生学の世界的拠点
第八章 人間改良
ダーウィンの息子/階級的立場からの決めつけ/天才統計学者が書いた「怪文書」/転換点/ダーウィンの息子
vs.ウェッジウッド4世/若き優生学者の懺悔
第九章 やさしい科学
米国の優生学/優生学綱領/フランスの優生学運動/人種隔離政策と博物館の意外な関係/生態系保全の第一人者が書いた優生学の「バイブル」/優生学に否定的だったモーガン/「民族浄化の科学」
第十章 悪魔の目覚め
自己家畜化する人間/ギリシャ時代からあった優生思想/優生思想で滅びたスパルタ/生き残ったソフトな優生学/ドブジャンスキーとマラーの対立/ステルス化する優生学
第十一章 自由と正義のパラドクス
優生学の思想性/目的はどこにあるのか/平和の祭典と優生学/崇高な理念とおぞましい差別
第十二章 無限の姿
現代のトランスヒューマニズム/ゲノム改変の誘惑/メルクマールは「目的」/ゲノムワイド関連分析の陥穽/「新しい優生学/」他

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

140
歴史上最も多くの人命を奪った科学思想は、間違いなくダーウィンの進化論に基づく「生存競争と適者生存」の論理だ。科学の力で人を改良できるとの幻想を生み、実行するのは正義であり進歩だとの確信を植えつけた。先頭に立って推進したピアソンやダヴェンポートはリベラルな学者であったが、アメリカでは黒人などの劣等人種を排除すべきとする優生学が広まった。その影響を受けたナチスは民族浄化の優生学を唱え、ユダヤ人虐殺やT4作戦に走ったのだ。ゲノム編集技術を手に入れた今、人類は優れた子孫を残したい誘惑にどこまで耐えられるだろうか。2023/12/15

trazom

109
ダーウィンの進化論を起点として、進化学の発展の歴史や、社会に与えた影響などを辿るとても面白い読み物。あのカイ二乗検定のピアソンが思いがけず登場するなど、興味深い話題が満載。無方向で無目的な進化論が適者生存の進歩史観に換骨奪胎されたり、道徳観や倫理観によってラマルキズムが指向され続けた歴史を目の当たりにして、科学が、形而上的な思索に翻弄され続けることの危うさを痛感する。後半部で「ダーウィンの呪い」が優生思想という亡霊を生み出したことが語られるが、その危うさは、ゲノム編集の技術を手にした現代に繋がっている。2024/04/20

樋口佳之

65
「個人の自由と平等の追求者は、容易に個人の犠牲と差別を強いるようになるという教訓」/後半の優生学に関わる部分は重大なお話。優生学と進化学は両輪。/「お金には十分余裕もあったし、ベストな遺伝子配列を持つ組合せを操作して、その操作が上手く行ったものを選んで(上手くいかなかったものは廃棄して)あなたが生まれた」なんて言われたらどうなるのだろう。「だからあなたはすごいし、実際良く出来てる」と言われても「それなのにあなたは…」と続いても…。/でも、高齢出産等出生前診断しますか?の問いは既に日常にあり。2024/02/05

よっち

37
本来、方向性がなく中立的な進化が、なぜひたすら進歩が続くと信じられるようになったのか。ダーウィンとその理解者、志を継いだ後継者たちの進化論が生み出した迷宮の謎に挑む一冊。ゲノム科学の進歩と相まって、生物と進化の理解に多大な貢献をした進化学。一方で政治・経済・文化・社会・思想に多大な影響をもたらし、曲解した彼の後継者たちが生み出した「優生思想」という怪物。「進化の呪い」「闘争の呪い」「ダーウィンの呪い」が生まれた過程を解説していて、そう上手くは行かないことは歴史が証明していても、なくならないし難しいですね。2023/12/13

逆丸カツハ

30
種の起源には目を通していて、進化に方向性がないことは理解していたが、とはいえ自分の認識は目の荒いものであっただろうことを知れて、素晴らしい読書だった。色々と自分の考えも修正が必要かもしれない。読んでいて、優生学は「比べること」が持つ暴力の最もおぞましい現れ方の一つではないかと思った。「比べること」の暴力を最小限にする方法はないか考えていきたいと思う。2023/12/30

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