内容説明
「それ独自の事実のフォルムと表示のなかに刻み込まれた時間――ここにこそ、私にとって芸術としての映画の第一の理念がある」。その理念が有機的統一をもって結晶する“イメージ”。『惑星ソラリス』『鏡』『サクリファイス』など、生み出された作品は、タルコフスキーの生きた世界の複雑で矛盾に満ちた感情を呼び起こす。俳優や脚本のあり方をはじめとする映画の方法は、現代において涸渇した人間存在の源泉を甦らさんとする意図とともに追求された。戦争と革命の時代である20世紀に、精神的義務への自覚を持ち続けた映画作家の思考の軌跡。
目次
序章/第一章 はじまり/第二章 芸術──理想への郷愁/第三章 刻印された時間/第四章 使命と宿命/第五章 映像について/時間、リズム、モンタージュについて/映画の構想──シナリオ/映画における美術の解決/映画における俳優について/音楽と騒音/第六章 作家は観客を探究する/第七章 芸術家の責任/第八章 『ノスタルジア』のあとで/第九章 『サクリファイス』/終章 訳者あとがき/文庫版訳者あとがき/年譜・フィルモグラフィ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
33
実に「濃い」1冊。思弁的であり、かつ愚直すぎるほど真面目に哲学的に映画を考察し、映画に欠かせないエレメントとしての時間について考え、果ては映画と観衆との関係について率直に切り込んでいく。ここまで濃厚に思考を煮詰めた果てにあるのがあの珠玉の名作群なのだな、と思うと唸ってしまう。私は東西冷戦が終わった頃くらいに物心ついたという、そんな年齢の人間なので当然タルコフスキーが生きた時代のシビアさなんてわかるわけもない。だが、そんな中でも全体主義国家の中で良心をくすぶらせ、自分を信じて映画を撮った姿が鮮やかに蘇る本だ2022/12/25
塩崎ツトム
29
4Kリマスター版の「ノスタルジア」を観に行ったらそりゃもう素晴らしかったので、この偉大な監督が一体なにを考えて映画をつくっていたのか知らねばならぬと思って読む。映画という新しい芸術作品と従来の芸術(絵画や文学)との差異、観客に対して媚びるのではなく信じること。運命について、物質社会における自由について。大いなる愛のために束縛と犠牲を選択する、本当の自由について。……。ジャンルは違うが、創作者の片隅にいる人間として、とても勉強になった。2024/06/26
フリウリ
14
精神的に高いものをもった人間、それも他の人々などへの攻撃性が欠如した「弱さ」をもち、物質的なルーチンワークに対抗する人間、を映画で描きたいのだとタルコフスキーは述べています。タルコフスキー自身の精神的な高さ、魂といった概念は、直接的にキリスト教の神につながっているようで、あいまいな部分があると思いましたが、精神的に高いけれども攻撃的でない人間、という「磨かれた」人間像について、考えさせられました。1970年から86年にかけて書かれた著作とのことです。82024/08/22
Ex libris 毒餃子
8
少しずつ読み進めたため時間がかかってしまった。映像芸術に対する考え方が難しい。2024/03/25
geromichi
8
凄い本だった。さすが単行本が古本屋で一万円するだけはある。ちょくちょくソ連の体制をさりげなく批判している気がした。2022/11/09
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