内容説明
菅原孝標女の名作「更級日記」が江國香織の軽やかな訳で甦る!東国・上総で源氏物語に憧れて育った少女が上京し、宮仕えと結婚を経て晩年は寂寥感の中、仏教に帰依してゆく。読み継がれる傑作日記文学。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
113
『更級日記』名だけは…。古文の授業は居眠りしてたか?30数年前、千葉に移り住み、近くの市原市にその昔、上総国の国衙があり、そこが更級日記の出だしの地であることを知りました。父・上総介菅原孝標が国守の任を勤め上げ、13歳の次女(著者・孝標女)ら家族と共にあずま路を辿り帰京するところから物語は始まります。日記と称しているが彼女が50代になってから著された回想録。念願の文学三昧、結婚、宮廷勤め、出会い(仄かな恋?)、父や夫との死別と物語に憧れた少女が次第に信仰の世界に浸って行く、女の一生を僅かな紙数に凝縮。 2023/11/11
優希
49
平安時代の文学少女の日記が江國さんの現代語訳で読めるのが嬉しかったです。源氏物語に憧れ、宮仕え、結婚、そして仏教に帰依していく日々。日記を通じてその空気が伝わってくるようでした。平安時代の日記文学の傑作ですね。2024/04/30
のびすけ
23
菅原孝標女による自伝的な回想録。源氏物語への憧れ、上総国から上京の旅の記録、京での生活と宮仕え、結婚・家族、そして神仏への帰依。中流貴族の女性の何気ない人生だけど、そこはかとなく面白い。源氏物語全巻が手に入り、夢中になって読み耽る様子がとても可愛らしい。昔も今も人の心は変わらないのだなとしみじみ思う。彼女が赴いた各土地の鮮やかな情景が印象的。2024/09/30
双海(ふたみ)
22
「更級日記」が江國香織の軽やかな訳で甦る。東国で源氏物語に憧れた少女が上京し、宮仕え・結婚、その後を描く、傑作日記文学。「更級日記」はずっと前に岩波と角川で読んで以来、久々。大事にしたい古典がまた一つ増えた。音読したい。2023/11/27
羽
20
平安時代から現代に戻ってきたくなくなるような本だった。訳者が好きだから、というのもその理由のひとつ。著者の藤原孝標女は、『源氏物語』を読み、和歌を詠み、友達付き合いはなく、古風な考え方をする両親のもとで育てられた文学少女。『更級日記』は、父の転任にともなってすみかを変える旅で見聞きしたこと、宮仕えをしたときのこと、神仏詣の感想、夢日記、晩年のはなしが主な内容だが、物語にふけってばかりいないで勤行にはげめよという読者への教訓のようでもあり、伏線を回収するミステリー小説のようでもあった。2024/03/24