内容説明
全てのまばたきが、伏線。
『江花病院』に長期入院している閉じ込め症候群(ロックドインシンドローム)の女性患者・岸部愛華が深夜に体調を崩した。当直中の産婦人科医・水瀬真理亜が診察すると、愛華は妊娠していることが判明する。寝たきりの愛華は誰に妊娠させられたのか? 病院は騒然となり、政治家である愛華の父は激怒するが、前代未聞の事件はマスコミに報道されて世間の知るところとなる。真理亜は真相を探るべく、話すことができない愛華のまばたきを通して彼女の”声”を聞くが――
社会派ミステリーの旗手が人間の尊厳と命の倫理に迫る、新たなる傑作。
※この作品は単行本版『アルテミスの涙』として配信されていた作品の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マロンのりたま
15
閉じ込め症候群というものを初めて知った。『正論なんてものは、人を追い詰めるためにしか役に立たない(略)自分は正しいことをしているという思い上がりがあるから、相手の心の傷には気づけない』この言葉は刺さりました。 だけど…あの毒親を育てたのは祖父母だよね…と思うとそこまで信頼できるかな…。まぁ環境によって人は変わるってことなのかな。2023/12/01
汲平
11
毒親と呼ばれる支配的な親子関係を巡る物語。一方、閉じ込め症候群の患者の意志を尊重するか、生まれてくる子供の社会的環境を尊重するか倫理観を問われる作品でもある。これに答えるのはとても難しい。本作のラストシーンを含め、どんなエンディングであっても、「本当にそれでいいのか?」という疑問は残るだろう。読者に問いかけることが目的の作品であればそれで良いのだが、ミステリにしたことで消化不良感が残る作品となったように思い、それが残念。2024/03/10
ろいと
9
★★☆☆☆ 意識はあるが四肢も顔の表情も一切動かせない「閉じ込め症候群」の女性患者の妊娠が発覚する……というミステリ。事件の真相自体はあっさり明らかになり、主題は人の尊厳と命の倫理について問いかける後半部分。確かに難しい問題ではあるが、正論を通しても皆が幸せになる訳ではない。ある程度の線引きは必要だと感じた。2024/03/15
MITOTA
6
高森医師の行動があまりに不自然でやっぱりね。という感じです。ただ、真理亜医師の後半の葛藤は、ストレートでよかったなぁ。気持ちが救われました。2024/03/18
慎次
6
題材的に、正論や倫理面、人の尊厳など色々なことから、賛否両論があるかもしれないし、作品としても、色々な見方のされる作品だと思いますが、僕は、心が揺さぶられました。2024/01/07