内容説明
宮内省に二十五年間勤めた仕人(つこうど)が好奇心たっぷりに覗き見た皇室とは? 明治天皇の素顔、大正天皇との追いかけっこ、 意地悪をする女官、「べらんめえ」口調の役人、犬の葬儀に坊さん五人・・・etc. 歴史学者・河西秀哉による新たな脚注と解説を付して、伝説の絶版本『宮廷』が待望の復刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
114
明治以降の天皇とその周辺についての本は何冊かあるが、高官による政治関係の話が中心だった。そんな宮中での生活が、雑務を担う仕人(自称茶坊主)の目線で「皇室のホームドラマ」として描かれる。著者のような下級役人は高位者には存在しないに等しいだけに、まさか書き残されるとは思ってもいなかったろう。常に厳めしく生きねばならないが、人である以上は必ず起きる揉め事や不始末を巡る悲喜劇の連続と隠蔽に奔走する有様は、まるで井上ひさしの芝居を観ているようだ。特に大正天皇の帝王の孤独と病気絡みの話は、人間として弱さを強く感じた。2023/12/05
tom
20
読友さんのコメントを読み借りて来る。以前、原武史さんと三浦しをんさんの対談本を読み、大正天皇という人に興味を持った。この本にも大正天皇のことがいろいろ出て来る。天皇という立場の人ということを考えると、けっこうユニークだったことが分かる。それはともかく、見ることも接することもありえない人たちの生活を垣間見せてくれるので(下世話な関心も含めて)、それなりに興味を持って読む。噂には聞いていたけれど、ウ○チはそのたびに、医官が見て健康状態を確認していたとか、旅行のときは、そのための設備を持ち運んでいたとか・・・。2024/01/15
hitotak
9
昭和26年に書かれた、皇室に仕えた下級役人の手記。役人といっても皇族方と会話することはなく、自身の仕事の内容や宮中での政治家や天皇をはじめ皇族の日常生活、漏れ聞こえるゴシップや事件などが書かれている。特に大正天皇の一癖ある行動や自由奔放さには驚いた。速足の大正天皇に持っている荷物を見咎められ、後を追われて必死に逃げるがとうとう追いつかれる(この間、両者共無言)著者のエピソードは想像すると相当シュールだ。大正天皇、皇后とも妾腹の生まれだが、腹は借り物という考え方で生母の扱いは軽く、日陰者扱いだったという。2024/02/18
ポルポ・ウィズ・バナナ
4
ある程度の距離でもって「宮廷」を見ると、なんでこの人たちは権力持ってんだろうと不思議になる。別に何かをどうしてるわけじゃないのに。幻想が原動力になっている。でもそれ幻想だぜ?現実的な部分だと、宮廷に出入りしている人の68%は薩摩、30%長州、1%水戸藩、残りがその他ってカンジ。2024/01/28
Teo
2
ちょっと勘違いして買ったがまあ面白かった。てっきり皇室周辺で道化とは言わないが変な行動する連中が居たのを資料から集めて書いた本かと思ったが、そうではなくてここで言う「茶坊主」とは江戸幕府の茶坊主みたいな意味で、皇室に仕えるまさに仕人(つこうど)と言う侍従でもない本当に皇室周辺で色々仕事をする身分の人が見聞きした内容を書いたもの。明治天皇の頃からの仕人で、昭和迄仕えていた、その内容。戦後間もない時に一度出たのを再販した物。 2023/11/19