内容説明
アウシュヴィッツ強制収容所を生き抜いたアルジェリア系フランス人の水泳選手、アルフレッド・ナカッシュの伝記物語。
主人公のアルフレッドは、トップアスリートとして素晴らしい成績を残し、さらにはアウシュヴィッツに収容される壮絶な経験をしたあとにも世界新記録を出すという偉業を成し遂げているが、フランスにおいても現在の人々の記憶にしっかりと残っているわけではなかった。本作はそんなアル
フレッドに光を当てた作品となっている。
極限状態にあっても、他者を思いやり分かち合おうとするアルフレッドの姿は、打ちのめされた人たちの気持ちを救い勇気を与え、自身も、そうすることによって癒され慰められていく。
「泳ぐこと」を生きる希望として収容所を生き抜いたアルフレッド・ナカッシュ。
この物語が描いているのは、ナチズムの闇に埋もれた知られざる英雄の真の姿である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つちのこ
40
ナチス占領下のフランスで活躍した水泳選手アルフレッド・ナカシュの激動の人生は、本書がなければ知る由もなかった。ホロコーストの犠牲者としてスポーツ選手を取り上げた例が少ないだけに貴重なノンフィクションである。反ユダヤ政策によりフランス選手権大会の不参加を余儀なくされたナカシュに対して、所属チームの選手たちが大会を棄権する行動に出たことは、強硬なナチス政策への抵抗と人種、偏見を越えたスポーツの絆を感じる。一方でそれを赦さないナチスのファシズムにはスポーツ本来の精神は存在しない。孤立を深める今のロシアにも⇒2023/12/24
おっぷう
0
アウシュビッツ強制収容所を生き抜いたアルジェリア系フランス人アルフレッド、カナッシュの伝記物語。スポーツ界にも反ユダヤ主義が浸透していった模様が描かれている。その理不尽な扱いに抗い記録を出し、人々に勇気を与えたカナッシュ。他者を思いやる人でもあった。2024/01/28