内容説明
老いていくことのゆるやかな心構え
1953年生まれの著者は今年、70歳になった。
「これまでは老人見習いのような感じであったが、これからは本格的に『高齢者』の域に突入する。(中略)そこで現在自分が人生観、世界観(というとあまりに厳粛な感じがするので、そういいたくはないが、要するに毎日の普通の心構え)を整理して纏めておきたい。」(巻頭「老年にはなったけど…」より)
「忘却」「記憶」「読むこと」「書くこと」「勉強」「音楽」「詩作」「犬」「幸福と若干の後悔」「スープと復讐」「もう一度行きたい、外国の街角」「秘密」「病」「信仰」「死」など、「老年」に身近な多彩なテーマを、そっと自らに問うている。
「この本はとてもリラックスして書いた。(中略)『人、中年に到る』と同じように、手元に何も資料など置かず、思いつくままに、好き勝手に筆を進めたわけで、書いているのが愉しかった。」(巻末「対話風の後書き」より)
エッセイ集『人、中年に到る』刊行から13年、「歳を取ろうとしているわたしは、はたして聡明になったのだろうか、幸福になったのだろうか」。映画、文学、漫画、演劇、料理など各分野を網羅する著述家による、書下ろし作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
124
2023年70歳となった現在地を確かめるエッセイ。13年前に57歳の時オスロで「人、中年に到る」を書いた。その続編にあたる。憧れの老人、吉田健一は生きていて一番いい時期は老年であると書いた。そのヨシケンは65歳で逝去した。モンターニュはエセーを47歳で書き、59歳で亡くなった。70歳となり、92歳になる母親と話すとまだ老年とは感じられない。若い頃ソウルにて過ごし、ずっと映画を中心とした比較文化論を書いてきた。50歳を過ぎてイスラエル・パレスチナや旧ユーゴで鮮烈な体験をしてきた。味わいのある文章の数々。2023/08/04
kaoru
80
映画・詩・文学・漫画に関する多くの著書がある多才な四方田氏も70歳になられた。13年前に大学を退職し「独りで荒地を彷徨う道を選んだ」後の人生を語るエッセイ集。「ユーミンの音楽を一度も聴かず河瀬直美の映画も10年以上見たことがない」。イタリアの巨匠・パゾリーニ監督に関する記述には蒙を啓かれた。ソウルや台湾の滞在記、愛する飼い犬達の思い出、自らの病、パンデミック、信仰について。「伝道の書」の『コヘレトの言葉』を初めて読んで以来、40年の時間を経てようやく味わえるようになったこと。「つねに信仰と懐疑の両極を→2024/03/09
kokada_jnet
68
2023年刊行。70歳になったのを契機に、現在の心境と過去の思い出を語る。あいかわらず、知的スノビズムとハッタリの化身。東日本大震災の際に、被災者たちに『上を向いて歩こう』を聞かせたという報道を批判し、クセナキスの前衛音楽に耳を傾けるべきと…、そうですか。とはいえ、書くつもりだったという書籍の一覧については、読みたいと思うものが多い。『メロドラマ論』『李香蘭とパレスチナ』『鏡花論』『二ーチェのイタリア』『セベロ・セルドゥィ論』『舞踏家の文体』『ジャッキー・チェン』『見ることの塩 第二部』『村上一郎論』。2025/04/13
もりくに
60
著者の初読が、「先生とわたし」。恩師である碩学・由良良美との濃密な師弟関係、そして突然の断絶は、四方田犬彦の名前を強く印象づけた。だから、書店で彼の名前を見つけると、必ず手に取ってみた。そして、彼の領域の広さに驚いた。戒厳令下の韓国レポート、パレスチナ、コソボからのレポート。私が次に読んだのは、彼が孤軍苦闘して映画研究をアカデミズムの中に位置づけた「日本映画110年史」。そして今回、「人、中年に至る」を飛ばして、本書。「コヘレトの書」(伝道の書)に、「歌うのに時があり、すすり泣くのに時があると、だから今。2024/07/10
Sam
50
著者の本を読むのは久しぶり。読み始めて、これはゆるやかに時間を過ごしながら読むべき本だと思ったのだが忙しさに紛れて走り読み。もったいない読み方をしてしまった。内容的には題名に反して思うがままに人生を語っていると思うがそこはご愛嬌。思わぬもの(こと)に偏愛ぶりを示したり些事にも思えるようなことに舌鋒鋭く迫ったりしているが、真っ直ぐな眼差しで自らの考えを飾ることなく語る著者の姿勢はいつも通りだと思った(というほど読んでないけど)。近著「パゾリーニ」のような大著には手が出ないが、今後も読み続けていきたいと思う。2024/05/08
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