内容説明
韓国社会を震撼させたデジタル性犯罪「n番部屋事件」。その実態を暴いた2人の大学生による取材記録! 「n番部屋」と呼ばれるテレグラム内のチャットルームでは、卑劣な手口で未成年者を含む女性たちが性的搾取の対象とされていた。被害者を救うべく「追跡団火花」として立ち上がったプルとタンによる潜入取材、そしてフェミニズムとの出会いやメディアの反応など事件前後の出来事を記した「わたしたち」の連帯のための一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
58
【私たちは目撃者であると同時に、被害者でもあった】2020年、韓国社会を震撼させたデジタル性犯罪「n番部屋事件」。9カ月間「n番部屋」を追跡し実態を暴いた2人の大学生による、事件前後の2人のライフストーリーやデジタル性犯罪の実態が記された実録ルポ。ニュース通信振興会「第1回真相究明ルポ」コンクール優秀賞を受賞。「はじめに」で、<ぜひ事件の存在を受け入れ、問題を認識してくださるようお願いします。私たちがこの事件を追い続けているのは、黙認していることから生まれる弊害を、あまりにもよく知っているからです>と。⇒2024/03/21
たまきら
38
記者を目指す2人の大学生が、コンクールに応募するために素材を探していて出会ったのは、児童から知人まで多くの女性たちを性的に搾取するチャットルーム、n番部屋だったー韓国政府がデジタル性犯罪を厳罰化するよう動き出すきっかけを作ったこの本は、そう、原動力に過ぎない。怒りの声をあげ続けた韓国人女性・男性のエネルギーが社会を変えたのだ。ともに家父長制の文化を持ちながらも、多くの韓国人女性たちは声をあげることを諦めない。私たちはこれを国際的なムーブメントにしなければいけない。2024/11/01
アイシャ
32
終始ザワザワとした心持ちのままの読書。盗撮問題を取り上げてコンクールに応募する準備をしていた韓国の女子大学生二人。取材するうちに見つけたデジタル性犯罪をシェアし合あうn番部屋。被害者を救うために潜入取材を続け、警察に通報していくのだが。デジタル性犯罪の処罰が軽いことに悩み、繰り返し長時間見た映像の残像に悩まされ、加害者からの報復を恐れ、被害者への2次被害を考慮しと、その苦労は想像を絶する。勇気ある若き二人のジャーナリストの戦いの記録が本書だ。被害者が切に望む動画の完全削除の難しさを思うと暗澹たる気持ちに2024/04/06
道楽モン
28
韓国の女子大生2人によるデジタル性犯罪の告発が世論を動かした。単に『カッコウはコンピュータに卵を産む』のようなハッカーモノではなく、男中心社会でいかに弱者が酷い目に遭っているのかを、訴えかけたものだ。人が持っている桁外れな残虐性と真っ向から向き合い、物理的な恐怖やネット上の非難と戦うのみならず己自身の弱さとも戦っているのが痛ましい。二人組であることがいかに心強かったことだろう。そして性犯罪や脅迫などの卑劣な行為は、単なる犯罪ではなく、当たり前の様に世の中に存在していることを発見する。被害者に非はない。2024/01/05
吾亦紅
22
韓国でテレグラムというメッセージアプリ内で起きた性犯罪を、ふたりの大学生が追跡し、警察や国を動かした記録。この本がとてもよく考えられていると思うのは、性被害の内容をとても慎重に扱っているところ。商業主義的、扇状的な表現は一切なく、被害者を守り抜いているところ。しかしこのふたりの大学生の心身の負担は相当なものと思うし、取材をしながらカウンセリングにも通っていた。翻訳者あとがきで、この匿名で活動していたふたり、ブルとダンは、現在実名を公表して公式に活動をしていると知った。2025/06/28