内容説明
案山子だらけの宵待村で、案山子に毒の矢が射込まれ、別の案山子が消失し、ついに殺人事件が勃発する。現場はいわゆる“雪の密室”の様相を呈していた──。俊英が二度に亙る〈読者への挑戦〉を掲げて謎解きの愉しみを満喫させる、正統的本格推理。合作推理作家の大学生コンビが謎に挑むシリーズ第1弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
349
これはヒット!私の好みのど真ん中。マニアが起こしたムーヴメントなだけに、ものすごい速さで細分化が進み、一部の要素を抽出して大仰に広げて自家中毒を楽しむものになりつつある国産本格。しかしこの作品からは最初期の新本格の匂いがする。案山子がガジェットとしてイマイチ機能していない点と、犯人の意外性のなさはやや残念。動機も面白味を欠く。それ以外は「こういうのが読みたかった!」という王道を突き進んでおり大満足。懐古主義といわれてしまうかもしれないが、もっとこういう直球なホームズ&ワトソン物の本格が世に出てきてほしい。2023/12/20
パトラッシュ
216
不穏な空気の漂う奇妙な案山子に彩られた山奥の村で起こる連続殺人。しかも現場は雪で密室と化し、警察の到着も遅れるなど困難な事件解決に挑む探偵。そんなクイーンやカーに挑む魅力的状況を考えるのは簡単だが、彼らに匹敵する鮮烈な解決がなければ単なる駄作視されてしまう。そんな厳しい本格ミステリの世界に挑んで、20代半ばの著者は見事に成功した。流行の特殊設定やハイテク利用もない人間関係のドラマが中心だが、王道といえる謎解きの連続は圧巻だった。犯人の動機に疑問が残るものの、読者への挑戦状をつけるにふさわしい正統派の1冊。2024/01/21
ふじさん
159
献本プレゼントのプルーフ本。案山子だらけの山村がミステリーの舞台。現場は雪の密室、犯人は誰か?楠谷佑のペンネームで活動する合作推理作家の大学生コンビが謎に挑むシリーズ1作目。二度に亙る読者への挑戦状を掲げて、最後まで謎解きの醍醐味を満喫させて貰った。登場人物の造形もしっかりしており、若さを感じさせない、巧みな文章、今後が楽しみだ。2023/12/16
ちょろこ
141
心地よい楽しさの一冊。ミステリって、驚き技法はもちろんだけれど心地よさも大切だと思う。舞台は冬の雪舞う秩父、案山子だらけの宵街村。そこで起きた案山子消失から始まる殺人事件を男子大学生コンビが解き明かすストーリー。誰が?何のために?ひたすら心に植え付けられる楽しさ。しかも二人の心地よい佇まいがこの楽しさに拍車をかけた。一つ紐解かれるごとに巻き戻る、あの時。全てが綺麗にまとまる心地よさ。真冬の旅館に連泊、露天風呂も一服の清涼剤。真っ白な雪に埋もれた真相を掘り起こす謎解きと旅情気分との重なりを堪能したミステリ。2024/01/23
tonnura007
118
合同推理作家の理久と真舟は小説のアイデア収集のため、案山子が立ち並ぶ宵山村に滞在することに。村では毒矢が案山子に打ち込まれる事件が発生し、遂には殺人事件が。現場に積もった雪に足跡はない。 事件が起こるまでの不穏な空気の作り方や謎の散りばめ方は本格推理小説の教科書通りと思う。読者への挑戦状の後もしっかりと推理展開できており納得の結論であった。少し気になったのは、事件発生後の素人探偵たちの調査や推理が甘い点(素人ならばこれが現実的なのかもしれないが)と犯人かもしれない人たちと普通に情報共有して推理している点。2024/08/03