内容説明
1918年のインフルエンザ・パンデミックに際し,その病原体がウイルスであることを示した日本人がいた.埋もれていた論文の著者山内保は,細菌よりも小さく「見えない」病原体に,どのようにして迫りえたのか.黄金期のパスツール研究所に連なる病原体の狩人たちの事績と人生をたどり,医学探究のドラマを描きだす.
目次
序章 インフルエンザウイルスの発見者T・ヤマノウチとは誰か
友人からの突然の問合せ
新聞記事に学界権威として現れた名前
発見者の改訂へ
パスツール研究所との新たなつながり
1 インフルエンザ菌からインフルエンザウイルスへ――インフルエンザの原因探究の歴史
インフルエンザの歴史と細菌説の登場
一九一八~一九年パンデミック:プファイフェル菌が病原菌なのか
山内の実験と主張:濾過性ウイルスへ
際立っていた山内の報告
コラム 共同研究者の坂上弘蔵と岩島寸三
その後の展開
ウイルスの発見と分離
2 天才の直感と濾過性ウイルスの概念の確立
パスツールの直感
狂犬病ワクチンの開発
パスツール研究所の創立
黄金期を迎えたパスツール研究所
ラントシュタイナーとレヴァディティのポリオウイルスの実験
コラム ラントシュタイナーの血液型発見
3 パスツール研究所の黄金期を支えたメチニコフ――波乱の人生を歩んだ異才
生まれながらにして天才科学者
動物学者としての道
食細胞の発見
パスツールとの出会い
パスツール研究所での日々
長寿への関心と梅毒のサル実験モデルの確立
コレラ菌の人体実験から生まれたプロバイオティクス
第一次世界大戦の勃発
コラム 破傷風抗血清の腐敗防止とワクチン開発
コラム 日本と強い絆をもった次兄のレフ・メチニコフ
4 パスツール研究所で山内が行った先端研究
パスツール研究所で学んだ最初の日本人
当時先端の研究課題にとりくむ
梅毒の血清診断と動物モデル
アトキシルと睡眠病
コラム 梅毒治療薬サルバルサンの開発
ウィーン大学でのアナフィラキシーの研究
外科医ドワイヨンとの共同研究
コラム 長野泰一のウイルス抑制因子(=インターフェロン)発見の論文
5 メチニコフのロシア調査団と野口英世のパスツール研究所訪問――山内の貴重な体験
メチニコフのロシア調査団
コラム ツベルクリンの歴史
野口英世のパスツール研究所訪問
6 山内保の生い立ちとその後
山内保の生い立ちから渡欧まで
日本の研究界への批判
野口英世の純粋痘苗(天然痘ワクチン)の臨床応用
コラム 痘苗からの細菌除去
山内保事件
おわりに
文献
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