内容説明
夢を幻視する「レクイエム」
「能はアレルゲンフリーの演劇だと、わたしは思っている。それだから、わたしは能に惹かれている。」(本書「前口上」より)
能のフォーマットを応用し、ついえた「夢」を幻視する、レクイエムとしての音楽劇――岡田利規による「能楽集」の全貌が、ついに明らかに!
東京オリンピック2020招致のため、2012年に新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれた天才建築家ザハ・ハディド。その圧倒的な造形のビジョンを白紙撤回され、その後ほどなく没した彼女をシテとして描く「挫波」。夢のエネルギー計画のため、1985年の着工以来一兆円を超す巨額の資金が投じられたものの、一度も正式稼動することなく、廃炉の道をたどる高速増殖炉もんじゅについて謡う「敦賀」。
表題作二曲のほか、夢幻能と間狂言に今日的なキャラクター(六本木駅に現れる金融トレーダーの幽霊、都庁前駅に現れるフェミニズムの幽霊、『ハムレット』のせりふを覚える舞台女優)を登場させ、資本主義に飲み込まれている現代日本の姿を描いた「N THEATER」とともに、演劇論(「幽霊はアレルギー症状を引き起こさない」、「能は世界を刷新する」)を併録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遠藤 悪
1
世の無念を能の形式で表現する面白さ。面白い。2022/10/18
nightowl
1
政治的な事柄を演劇のフォーマットに落とし込む際の距離感が絶妙。声高でない静かな訴えが却って心に沈み込む。韓国文学に印象は近い。ただ、フェミニズムの幽霊は余りにも紋切り型すぎて書き込みが浅すぎる。2021/05/17
hasebo
0
チェルフィッチュ岡田さんが日本文学全集で能狂言の現代語訳を池澤夏樹さんから依頼されたことをきっかけに、インスパイアされて、夢幻能の形式で現代演劇を創作するに至る。次回作以降も期待。上演は延期されていたところ、2021年6月に実現。チケットが人気で行けなかったので、先に戯曲を。この形式で現代の不条理をもっともっと扱って欲しい。2021/06/18
ぱリ
0
2020年に観るはずだった芝居。2021年6月のチケットを取った。みんなで決めたはずなのに、うまくいかなくなったら人のせいにする。本当はもっともっと考えなくてはならない。考えることを面倒くさがらないこと。自戒をこめて。2021/04/18