内容説明
無敵の28連勝、傷害で逮捕、永久追放、失明、孤独死……。ピストン堀口より強かった天才ボクサーの波瀾万丈!――大阪ミナミにいまも生き続ける「ベビー伝説」。昭和20年代に「最強のボクサー」といわれたフィリピン人の遺骨を胸に、著者はベビーの故郷イロイロへ向かった……。
「ベビーさん、冬、今年の冬にイロイロへ行ってくるわ」
「冬…。フィリピン、冬ないよ…」
「そう、だから、僕が、イロイロへ行ってくるわ」
「イロイロ…イロイロなあ…」
故郷の名前を何度も口にしたあとでベビーは
「泊まる…とこ、あるんか」。確かにそう言った。――――「第7章 冬のない故郷」より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
81
昭和20年代 最強のボクサーといわれた ボクサー ベビー・ゴステロの生涯を 追った作品である。 ボクシングを通して 描かれる日本の戦中戦後の風景が まるで映画を見るように懐かしい。 無敵の28連勝、逮捕、永久追放、失明、 孤独死…天才ボクサーの波瀾万丈の 人生が語られる。 ゴステロの遺骨を持って 祖国を訪れた著者が見たものは何だったのか? 日本とフィリピンのもう一つの戦後史とも言える作品だった。2023/01/20
半木 糺
4
戦中・戦後に大阪ミナミの地で「神様」とあがめられた伝説のフィリピン人ボクサー、ベビー・ゴステロの生涯を描いている。日本ボクシング界のエースとして業界を引っ張ったゴステロだが、戦後復興が進み、日本全体が経済成長に入るととたんに転げ落ちていく。これはゴステロが戦後社会に適応できなかったというよりも、そもそも敗戦後の猥雑な世界でしか生きられなかったということであろう。ゴステロは周囲に多大な迷惑をかけて逝った。迷惑をかけられた側はたまらないだろうが、ゴステロのような人間が生きていけない現代は潔癖すぎるのでは。2013/08/09
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