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内容説明
「ケアレスミスが多い」「人間関係がうまくいかない」――生活や仕事上で問題を抱える「大人の発達障害」が注目を集めて久しい。実はその中に「高学歴でありながら、発達障害を抱えている人」が少なからず存在する。「エリート」のイメージと「障害」の実情の狭間で理解が得られず、周囲と自分を比べては落ち込み、アイデンティティの葛藤を抱える……。当事者、大学教員、精神科医、支援団体への取材を通じて、発達障害が取りざたされる背景にある「異質であること」「非効率的であること」に不寛容な社会の姿を浮かび上がらせる。
目次
はじめに/第1章 発達障害とはどのようなものか/発達障害の主な分類/線引きは曖昧/「発達障害者は天才」という大きな勘違い/高学歴だからと期待されたのに仕事ができない/見た目と学歴と仕事のギャップ/女性当事者ならではの困難/第2章 高学歴発達障害が抱える不条理/理解を得られずすべり落ちていく 大石幸太郎さん(26歳)早稲田大学政治経済学部卒業/自然な流れで早稲田の政治経済学部へ/「あなたは早稲田大学を出ているんだから発達障害とは違う」/精神障害者雇用の現実/福祉の滑り台/同級生と比べて落ち込んでしまう /村上優子さん(30歳)大阪大学外国語学部卒業/周りの子たちは内定が出るのに/言葉をそのまま受け止めてしまい余計に怒られる/同級生と自分を比べてしまう/人としての“合格ライン”が上がってしまう感じ /石川真里さん(28歳)東京大学法学部卒業、公共政策大学院修了/取り繕えないことが面接で功を奏す/会社を実質クビに/言われないと行動ができない/「ようやくみんなと同じ位置に立てた感じ」/よりうまく生きていくための居場所 /湯浅智昭さん(29歳)早稲田大学国際教養学部卒業/面接官の望む回答ができない/自分を必要以上によく見せようとするのが苦手/北関東での研修/東京に戻るとさらなる地獄が待っていた/診断を機に地方での転職を決意/脚本家になって同級生たちの態度が一変 /前園佳奈さん(33歳)慶應義塾大学文学部卒業/将来を見据えて進学したものの就活で挫折/エリート同期たちからはニート扱い/障害を周囲に伝えることの難しさ/手のひら返しと複雑な気持ち/自分の意志がないのに“意識高い系”になってしまった /高松恵理子さん(26歳)青山学院大学文学部卒業/コミュニケーション能力をつけるために荒療治/マッチングアプリをやりこみながらも運動部へ/「何者かにならないといけない」プレッシャー/他の人と方程式が違う/早稲田大学が「自分」を作ってくれた /三崎達也さん(35歳)早稲田大学政治経済学部卒業/指定校推薦で幸いにも早稲田大学へ/障害者手帳が取得できない/早稲田卒であることを隠す/それでも早稲田は自分のポジティブな部分を作ってくれた/理解のある夫に支えられてフリーランスの道へ 藤岡綾子さん(33歳)早稲田大学法学部卒業/エリート家系のプレッシャー/社長が私の学歴を自慢する/正社員を目指すことへの葛藤/理解のある夫に支えられている/発達障害の人が働きやすい会社をつくる 山田耕介さん(42歳)慶應義塾大学経済学部ほか卒業/老舗の薬品問屋のおぼっちゃん/海外だからといってコミュニケーションがうまくいくわけではない/厳格な父親が作った社風の改革/経営者協会での人間関係/天職にたどり着いたASD女性 高橋希美さん(45歳)上智大学理工学部卒業/機能不全家族/女子グループが固まってしまう学科/パワハラ気質の社員/才能を活かせる穏やかな環境/第3章 発達障害当事者の大学准教授が見た大学 ──京都府立大学文学部准教授 横道誠さん/大学教授もひとりのサラリーマン/自己啓発的なところがある認知行動療法/自助グループは生きやすさを見つける場/無意識のうちの差別/「ガラス張り」になっていく大学/第4章 アイデンティティと現代社会と発達障害 ──精神科医 熊代亨さん/低学歴のほうが生きやすい?/アイデンティティが負い目に変わる/自己像に沿った支援を受ける難しさ/人は急には変われない/「何かできるはず」と思うことも大事/コモディティ化した現代の生きづらさ/産業構造と発達障害/第5章 当事者に対する支援の取り組み/学生たちと作り上げる、学生のための支援 筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局 佐々木銀河さん/合理的配慮の義務化/どのようなことに困っているか/機器や情報ツールの提供/学生たちと作り上げる支援と情報発信/「障害」という枠組みをどう捉えていくのか/門戸は広がっている 株式会社Kaien代表取締役 鈴木慶太さん/発達障害支援に関するあらゆるサービスを手掛ける/なんだかんだ能力は高いはず/擬態は疲れる/合理的配慮はあらゆる人に関係がある問題/おわりに
感想・レビュー
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