ちくま新書<br> ルポ 高学歴発達障害

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ちくま新書
ルポ 高学歴発達障害

  • 著者名:姫野桂【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2023/10発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075826

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内容説明

「ケアレスミスが多い」「人間関係がうまくいかない」――生活や仕事上で問題を抱える「大人の発達障害」が注目を集めて久しい。実はその中に「高学歴でありながら、発達障害を抱えている人」が少なからず存在する。「エリート」のイメージと「障害」の実情の狭間で理解が得られず、周囲と自分を比べては落ち込み、アイデンティティの葛藤を抱える……。当事者、大学教員、精神科医、支援団体への取材を通じて、発達障害が取りざたされる背景にある「異質であること」「非効率的であること」に不寛容な社会の姿を浮かび上がらせる。

目次

はじめに/第1章 発達障害とはどのようなものか/発達障害の主な分類/線引きは曖昧/「発達障害者は天才」という大きな勘違い/高学歴だからと期待されたのに仕事ができない/見た目と学歴と仕事のギャップ/女性当事者ならではの困難/第2章 高学歴発達障害が抱える不条理/理解を得られずすべり落ちていく 大石幸太郎さん(26歳)早稲田大学政治経済学部卒業/自然な流れで早稲田の政治経済学部へ/「あなたは早稲田大学を出ているんだから発達障害とは違う」/精神障害者雇用の現実/福祉の滑り台/同級生と比べて落ち込んでしまう /村上優子さん(30歳)大阪大学外国語学部卒業/周りの子たちは内定が出るのに/言葉をそのまま受け止めてしまい余計に怒られる/同級生と自分を比べてしまう/人としての“合格ライン”が上がってしまう感じ /石川真里さん(28歳)東京大学法学部卒業、公共政策大学院修了/取り繕えないことが面接で功を奏す/会社を実質クビに/言われないと行動ができない/「ようやくみんなと同じ位置に立てた感じ」/よりうまく生きていくための居場所 /湯浅智昭さん(29歳)早稲田大学国際教養学部卒業/面接官の望む回答ができない/自分を必要以上によく見せようとするのが苦手/北関東での研修/東京に戻るとさらなる地獄が待っていた/診断を機に地方での転職を決意/脚本家になって同級生たちの態度が一変 /前園佳奈さん(33歳)慶應義塾大学文学部卒業/将来を見据えて進学したものの就活で挫折/エリート同期たちからはニート扱い/障害を周囲に伝えることの難しさ/手のひら返しと複雑な気持ち/自分の意志がないのに“意識高い系”になってしまった /高松恵理子さん(26歳)青山学院大学文学部卒業/コミュニケーション能力をつけるために荒療治/マッチングアプリをやりこみながらも運動部へ/「何者かにならないといけない」プレッシャー/他の人と方程式が違う/早稲田大学が「自分」を作ってくれた /三崎達也さん(35歳)早稲田大学政治経済学部卒業/指定校推薦で幸いにも早稲田大学へ/障害者手帳が取得できない/早稲田卒であることを隠す/それでも早稲田は自分のポジティブな部分を作ってくれた/理解のある夫に支えられてフリーランスの道へ 藤岡綾子さん(33歳)早稲田大学法学部卒業/エリート家系のプレッシャー/社長が私の学歴を自慢する/正社員を目指すことへの葛藤/理解のある夫に支えられている/発達障害の人が働きやすい会社をつくる 山田耕介さん(42歳)慶應義塾大学経済学部ほか卒業/老舗の薬品問屋のおぼっちゃん/海外だからといってコミュニケーションがうまくいくわけではない/厳格な父親が作った社風の改革/経営者協会での人間関係/天職にたどり着いたASD女性 高橋希美さん(45歳)上智大学理工学部卒業/機能不全家族/女子グループが固まってしまう学科/パワハラ気質の社員/才能を活かせる穏やかな環境/第3章 発達障害当事者の大学准教授が見た大学 ──京都府立大学文学部准教授 横道誠さん/大学教授もひとりのサラリーマン/自己啓発的なところがある認知行動療法/自助グループは生きやすさを見つける場/無意識のうちの差別/「ガラス張り」になっていく大学/第4章 アイデンティティと現代社会と発達障害 ──精神科医 熊代亨さん/低学歴のほうが生きやすい?/アイデンティティが負い目に変わる/自己像に沿った支援を受ける難しさ/人は急には変われない/「何かできるはず」と思うことも大事/コモディティ化した現代の生きづらさ/産業構造と発達障害/第5章 当事者に対する支援の取り組み/学生たちと作り上げる、学生のための支援 筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局 佐々木銀河さん/合理的配慮の義務化/どのようなことに困っているか/機器や情報ツールの提供/学生たちと作り上げる支援と情報発信/「障害」という枠組みをどう捉えていくのか/門戸は広がっている 株式会社Kaien代表取締役 鈴木慶太さん/発達障害支援に関するあらゆるサービスを手掛ける/なんだかんだ能力は高いはず/擬態は疲れる/合理的配慮はあらゆる人に関係がある問題/おわりに

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネギっ子gen

71
【高学歴なのに、仕事ができない】高学歴の発達障害者が少なからず存在し、彼らはイメージと実際の狭間で葛藤している。自身も発達障害者である著者が、理解が得られにくい現状に対して、取材を通じて迫った新書。「あとがき」で、<「マイノリティ」や「マジョリティ」と言っても、ひとりひとりには個別の人生の事情がある。「発達障害者にはこの支援」と決め込むのではなく、その人に合った個別の支援が必要なのだ。通り一遍の「理解」ばかりではなく、それぞれの事情にも目を向けていくべきだし、この本がその契機となってくれたら嬉しい>と。⇒2024/01/30

よっち

37
生活や仕事上で問題を抱える大人の発達障害が注目を集める中で、高学歴でありながら発達障害を抱えている人が少なからず存在している。当事者たちへの取材を通じて不寛容な社会の姿を浮かび上がらせる一冊。高学歴であるがゆえに発達障害と認められなかったり、順調に出世する同期たちと自分を比較したり、アイデンティティが負い目に変わったり。学生の間はよくても、社会人になるとコミュニケーションや自分の判断で動く難しさから苦しむケースにどう向き合うのか。周囲の配慮も必要ですけど、カミングアウトする難しさもありそうな気がしました。2023/10/28

おいしゃん

28
本書に出てくる人々の、生きにくさや劣等感に強く共感。当事者だけでなく、研究者や医師、支援の側など色々な所見も勇気づけられる。現状がどうあれ、自分の生きてきたバックボーンは大事にしていきたい。2023/11/03

海燕

18
程度の差はあれ、多くの人が発達障害の症状・特徴を有していると、他の本で読んだことがある。自分自身、少し当てはまる部分があると自覚してもいる。本書の前半は高偏差値とされる大学を出ながら、就職後うまくいかなかった人へのインタビューが中心。勉強ができた人は、自分はもっとできるんだという自認と、周囲からの低い評価とのギャップに悩む。昭和の時代は、今だと特別支援学級に入るような子も一緒にやっていて、そういうものだと皆も思っていたのが、現在は発達障害という枠ができてふるいにかけられている。障害への理解が必要だ。2023/11/16

Francis

17
本屋で手に取って読んでみたら面白そうだったので購入してすぐに読んだ。「大人のギフテッド」などギフテッドに近い悩みを抱えているのかなと感じたり、ギフテッドとも違った苦しみがある事もうかがえた。私も身体障害者であり、そして発達障害に似た症状があるように最近感じているので他人事とは思えなかった。正直まだ日本は生涯など他の人とちょっとでも違ったり「普通」でなかったりすると生きづらい社会なのだな、と思う。もっともその「普通」と言う考え方にもモヤモヤした思いを感じてしまうのですけれども。2023/10/15

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