ちくま新書<br> 近代美学入門

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ちくま新書
近代美学入門

  • 著者名:井奥陽子【著者】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 筑摩書房(2023/10発売)
  • ポイント 10pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075840

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内容説明

近代美学は、17~19世紀のヨーロッパで成立しました。美学と言っても、難しく考えることはありません。「風に舞う桜の花びらに思わず足を止め、この感情はなんだろうと考えたなら、そのときはもう美学を始めている」ことになるからです。本書は、芸術、芸術家、美、崇高、ピクチャレスクといった概念の変遷をたどり、その成立過程を明らかにしていきます。

目次

はじめに/第1章 芸術──技術から芸術へ/1 「建築は芸術か」/2 本章のポイント/3 アート=技術(古代~中世)/3‐1 アートは技術(学芸)の意味だった/テクネーとアルス/アルス・ロンガ、ウィータ・ブレウィス/発展──模倣の技術/3‐2 文芸・音楽と絵画・彫刻・建築は別グループだった/自由学芸/機械的技術/絵画・彫刻・建築の位置づけ/アーティストとは誰か/3‐3 美=芸術ではなかった/4 アート=芸術(近代以降)/4‐1 「芸術」概念成立の土壌/新旧論争/詩画比較論/美術アカデミーの創設/文芸・音楽と絵画・彫刻・建築の共通点/4‐2 新グループ「美しい諸技術」、そして「アート」へ/新しいグループ名の探求/ペローとバトゥー/発展──美しい自然の模倣/形容詞と複数形が抜けた「アート」/補足──日本語の「芸術」と「美術」/5 何が芸術で、何が芸術でないのか?/美しい諸技術には何が含められたか/芸術の条件──「~は芸術か」という問いをほどく/近代の「芸術」概念を相対化する/第2章 芸術家──職人から独創的な天才へ/1 「独創的な芸術家は世界を創造する」/2 本章のポイント/3 芸術家をとりまく環境と作者の地位の変遷/3‐1 注文に従って制作する職人(古代~初期近代)/パトロネージによる制作/「作者」概念の不在/画家のサインから見る意識変化/3‐2 独創的な作品を創造する天才(18世紀以降)/ギルドやパトロネージからの独立と芸術の公共化/模倣から表現へ(ロマン主義の芸術)/天才としての芸術家像/神格化された芸術家/4 芸術家にまつわる概念の変遷/4‐1 ジーニアスの人間化/ゲニウス(守護霊、守護天使)/インゲニウム(生得的な素質・能力)/ゲニウスとインゲニウムの混同/4‐2 クリエイションとオリジナリティの人間化/神のクリエイション/芸術家のクリエイション/オリジナルとオリジナリティ/5 作者と作品の関係をどう捉えるか?/ケルン大聖堂にて/作者と独創性の偏重/近代的「作者」の乗り越え/「作者の死」のその先に/第3章 美──均整のとれたものから各人が感じるものへ/1 「美は感じる人のなかにある」/2 本章のポイント/3 美の客観主義(古代~初期近代)/3‐1 美は幾何学の原理に従っていると考えられた/古代ギリシャ語の「美」/宇宙と美の原理としての数(ピュタゴラス)/幾何学者としての神(プラトン)/プロポーション理論/補足──複雑なものと単純なもの(多様の統一、光の美学)/3‐2 人体のプロポーションを求めて/美しい身体の追求/古代ギリシャ・ローマの人体比例論/ルネサンスの人体比例論/補足──黄金比/4 美の主観主義(18世紀以降)/4‐1 伝統からの離反/古典理論への疑義/プロポーション理論の否定(バーク)/主観主義と客観主義の狭間で(ヒューム)/4‐2 客観主義との調停/道徳や味覚との類似(道徳感覚学派)/美の主観性と普遍性(カント)/5 美の概念とどのように付き合うのがよいか?/美の自律性と唯美主義/芸術の自律性と「芸術のための芸術」/美は絶対的で自律的な価値か/第4章 崇高──恐ろしい大自然から心を高揚させる大自然へ/1 「崇高なものが登山の本質だ」/2 本章のポイント/3 山に対する美意識の転換/3‐1 山は恐ろしく醜い場所だった(古代~初期近代)/危険で近づきがたい存在/崇拝と忌避の対象/神の罰としての醜悪な山(山岳論争)/3‐2 登山による印象の変化(17世紀以降)/ペトラルカの登山/グランド・ツアー/理論と経験の衝突(バーネット)/歓喜に満ちた戦慄(デニス)/崇高概念との交叉/4 「崇高」概念の転換/4‐1 言葉の崇高(古代~17世紀)/文体としての崇高/ロンギノスの『崇高について』/ロンギノスの再発見と再解釈(ボワロー)/4‐2 自然の崇高(18世紀以降)/自然体験とロンギノス『崇高について』のリンク/自然の崇高の確立(バーク)/人間理性の崇高さ(カント)/芸術に描かれた崇高な山/5 芸術は圧倒的なものとどのように関わることができるか?/崇高概念の復興と変容/現代アートと崇高(抽象表現主義)/描くことができないものに向き合う/第5章 ピクチャレスク──荒れ果てた自然から絵になる風景へ/1 「絵になる景色を探す旅」/2 本章のポイント/3 風景画とピクチャレスクの誕生/3‐1 風景画と「風景」概念/風景画の不在と登場/「風景」の誕生/クロードとローザの描く風景/3‐2 ピクチャレスクの成立/ピクチャレスクの定義/不規則さによる多様性/構図による統一性/1の答え合わせ/4 ピクチャレスクの広がり(観光と庭園)/4‐1 ピクチャレスク・ツアー/国内旅行の流行と観光産業の成立/風景のスケッチ/クロード・グラス/ピクチャレスクな人/4‐2 風景式庭園への適用/庭園革命/風景式庭園とピクチャレスク/5 美や芸術は自然とどのように関わることができるか?/風景の形式化と理想化/自然鑑賞の普及/自然を美しいものとして眺めること/芸術をとおして自然と向き合う/おわりに/あとがき/読書案内/索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

コットン

65
西洋の美学について色んな例(時には数学的に、時には哲学的に)や画像を用いて平易に解説してくれるのが良い。最終章はイギリスで一大ブームを巻き起こしたピクチャレスクについても論じられていて興味深かった。2023/12/15

ころこ

47
タイトルの厳つい感じとは異なり、講座の文字起こしを再構成したものであり読み易い。読書に慣れていないひとのために、要所で重要なフレーズは横書きでピックアップされている。更に、各章には要点をまとめた箇所が設けられていて、「おわりに」本書全体を総括した文章がある。そして、何よりも読み易さをつくっているのは、著者が初学者に対して伝えるということに対して意識的だということにある。美術やアート(アートにはまた技術という意味もある)と呼ばれるものに対して、我々が感じ、考えることを対象化することに重点を置いている。それら2023/11/02

うえぽん

36
17-19世紀欧州で成立した近代美学を美、崇高、ピクチャレスクという鍵概念で説明した入門書。市民講座の内容を基にしており、理解し易い。日本文化に比べ規則性や人類の自然に対する優越性を重視するのが西欧文化なのか。古典的な美の客観主義や山を醜悪と見た山岳論争からは裏打ちされるが、近代以降の主観主義美学や粗さ・不規則性を重視したピクチャレスク概念からは、そう単純でない事を理解。ヒューム、カント、バークという哲学者による美や崇高の定義も興味深いが、読後の美術館巡りや「映え」風景探しは、読前とは異なるものになろう。2024/02/04

松本直哉

27
カント『判断力批判』をかみくだいてわかりやすくしてくれて、哲学音痴の私には有益であった。美を主観的かつ自律的なものとする彼の説が、現代の我々の考え方の基礎になっているらしい。ここからは私見だが、逆に今では美は客観的で他律的ではなかろうか。客観的判断基準があるかのようにコンテストで美が査定され、絶対的かのような美の基準に合わせて体型を整えたりまぶたを二重にしたり、無調の音楽には激しい拒否反応を起こしたり。カントの言う美の普遍妥当性はある種のファシズムとなって、妥当しないものへの断罪にもつながりうるだろう。2023/10/31

chanvesa

26
カントの『判断力批判』をコンパクトにまとめている中で、美的判断は「普遍性を実際にもつわけではないけれど、普遍性を要求する」、「美を感じるときの心地よい感情はあらゆる人に共通すると想定できるから」(176〜7頁)というのは、美が主観と客観の間にいるという考えは納得する。絵画を見て、勇気が湧いてくる、心が躍る感じることはあるが、美しいと思うことはあまりない。美しいという感じがよく分からない。カントやバークが崇高という考えを持ち出してから、崇高の対象が自然ではなく人間に転換されるという考えも興味深い。2024/09/28

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