内容説明
逃げたい夜もあった。妻であることから、母親であることから……。夫を亡くしたあと、癌で逝った実母と、高齢の夫と暮らす認知症急速進行中の義母。「ふたりの母」の生きざまを通してままならない家族関係を活写するエッセイ。
婚約者として挨拶した日に、義母から投げかけられた衝撃の言葉(「義母のことが怖かった」)、実母と対面したあとの義母の態度が一気に軟化した理由(「結婚式をめぐる嫁姑の一騎打ち」)、喫茶店を経営し働き通しだった実母の本音(「祖父の代から続くアルコールの歴史」)、出産時期と子どもの人数を義父母に問われ続ける戸惑い(「最大級のトラウマは出産と産後」)、義母の習い事教室の後継を強いられる苦痛(「兄の遺品は四十五年前に母が描いた油絵」)など全14章で構成。
義父や義母の介護をしながら時折居心地の悪い気持になることがある。実母に対して何もしてあげられなかったのに、あれだけ長年私を悩ませた義父母の介護をするなんて、これ以上の皮肉はあるだろうか。
(本書「結婚式をめぐる嫁姑の一騎打ち」より抜粋)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
149
正直なところ、そろそろ勘弁して下さいって私の心の声が漏れる。捉え方の違いかもしれないが飯のタネにはなってるよね。と私の心に巣食う鬼が顔を出してちょっと焦る。親だって逃げたいときもあっただろう・・私自身も身をもって知ることは多々ある。村井さんのエッセイは時々しんどくもなる。綺麗に読まされるからかなぁ・・それは村井さんの実家家族との関係が終焉しているからかもしれない。今だから言える事と、今になって言う?事がせめぎ合ってるような気もした。2人の母を一冊の本で読まされて複雑な読後感。2023/11/03
モルク
103
いやー、きついわ。村井さんよくやってる。強烈なキャラクター、正当性を曲げず、こんなこと言われたらトラウマになるほどの辛辣な言葉を投げかけ干渉してくる義母。息子、孫を愛するがあまり嫁の都合、迷惑を考えず毎週押しかけ断ることを許さない義父母。そして強く言えない夫。実母も癖があり厄介な兄とともに心の交流はできない。実家にも頼れずがんじがらめ。義母が認知症になったお陰でかえって扱いやすくなったらしいがそれにしてもあまりの強烈さに小説か?と思えてしまう。いやいや、尊敬します!村井さん。2025/03/24
じいじ
87
ところどころ辛かったが、何とか読み終えました。私の妻を悩ませた「嫁姑問題」と「両親の介護」のこと、まもなく訪れるかもしれない「介護」を受ける立場が、頭のの中で錯綜しました。もう2~30年も経つのでだいぶ薄れましたが、私の母(妻の義母)は、私の兄妹5人を育てたタフな人でしたが、父にも手に余る母でしたから、妻も大変苦労しました。一方、義母(妻の母)は私だけでなく、娘と息子たちにとってもサイコーのお婆ちゃんでした。今作、読み友さんのレビューでシビアな内容のようで躊躇いもありましたが、読んで良かったと思います。2023/12/14
ゆみねこ
76
実母も義母も何と厄介な存在だろうか…。村井さんの文章はとても読みやすいけど、辛辣な内容は実母と同居する私にグサグサとナイフを突きつけられるかのようだ。村井さんのお家の場合、どちらの母上も中々に面倒なお方のようだが、書いているご自身も中々のお方なのかも。私自身は介護をしてもらう立場になる前にぽっくりと逝きたいけど。。2023/12/03
ネギっ子gen
71
【逃げ続けてきた原家族との繋がりだが、失ってはじめて、私のなかに間違いなくある彼らへの強い愛情を意識する】夫を亡くした後に癌で逝った実母と、高齢の夫と暮らす認知症急速進行中の義母。「二人の母」の生き様を通し、ままならぬ家族というものを描いたエッセイ。<実母も義母も、認知症になってからも普段のクセは抜けなかった。母は無意識に、兄に私の悪口を言ってしまい私に責められ、義母は今になっても、思ったことをすぐに口に出してしまって介護関係者をイラッとさせている>と。激変したりもするが、多くはその人らしく老いますね。⇒2024/08/18
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