内容説明
被災地を巡るダークツアーを担当するヨナは、自社企画の査定を命じられベトナムへ向かう。企画は新味に欠け、ヨナは会社に打ち切りを提案しようとするが、たまたまひき逃げ事件を目撃したことで謎の一味に新たなダークツアーを「捏造」するよう脅迫され……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
路地
38
被災地を巡るダークツアーなるものが存在することを初めて知った。安全なで経済的にも優位な立場から被災者を見物する悪趣味なツアーだが、当地の経済に組み込まれており災害が風化したあとでもその誘致に必至になってしまう。今も未発達な暮らしが続いているような島ぐるみでの演技に始まり、ついには人工的に災害を再現してしまうに至る負の連鎖だが、巻き込まれ命を落とす当事者ではない支配者によって演出されるところに現代社会を写しているように思う。そのうえで文字通り全てを流し尽くす本物の天災が起こる展開のうまさが素晴らしい。2024/12/21
星落秋風五丈原
27
確かにジャンル分け難しい作品でした。2023/11/02
ケンタ
26
韓国ミステリー初読み。災害被災地を巡るダークツアーを企画する主人公ヨナ。ヨナが自社企画の査定を命じられてベトナムの砂漠へ向かい、そこで巻き起こるサスペンスというかホラーな展開に唖然。一体何が起きているのかと思う間もなく、分量もそれほどでもないのであっという間に読了してしまいました。何だろうこの読後感、な作品。2024/02/16
新田新一
26
英国推理作家協会賞受賞作。主人公のヨナはダークツーリズムを企画する会社に勤めています。ダークツーリズムとは、被災地を見に行くツアーです。ベトナムのツアーに行った時、ヨナはそこでトラブルに巻き込まれ、韓国に帰国できません。異国での心細い心情は、私も経験があるので彼女に感情移入しながら読みました。災害さえも、利益追求の対象にしてしまう現代社会の病んだ部分に、切り込んでいく書き方に惚れ惚れしました。不条理が幻想的に描かれるのはカフカの小説に似ており、ミステリーと言うより純文学に近い内容です。2023/12/08
ふう
23
韓国発ジャンル分けの難しいブラックなサスペンス。なぜか最初かなり読みづらくて苦労したけどその後は一気読み。自社のダークツアーに参加する羽目になったヒロインが体験するリアルな悪夢。この人は、この言葉は、この感情は、この出来事は…自分が見て聞いている”現実”がぶれて揺らいでしまう怖さ、心細さが短い話の中でひしひしと伝わってくる。できたら裏表紙の作品紹介もだけど、あとがきは絶対に読後をおすすめ(当然と言えば当然か)。どうしたらいいのかわからない、どうにもならない絶望をより楽しめるはず。2023/12/23