中公文庫<br> おどるでく 猫又伝奇集

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中公文庫
おどるでく 猫又伝奇集

  • 著者名:室井光広【著】
  • 価格 ¥1,320(本体¥1,200)
  • 中央公論新社(2023/09発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784122073838

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内容説明

室井光広とは誰だったのか?
誰でもない。宇宙を吹き渡るコトバの元気(げんき)、天籟(てんらい)だった。
――辻原登

こんな凄い小説が書かれていたことに驚きました。
生きる悲しみが言葉の奥底に繋がっていることを知りました。
貪るように読みました。
――町田康

カフカ、ボルヘス、ジョイスといった先達を読み/書くことを通して、日本という「辺境」から世界文学の最前線へ。詩と小説と批評の三位一体を追求した現代文学最高の精華が、ここに再生する――。

辻原登氏
町田康氏
多和田葉子氏
推薦!

表題作は第111回芥川賞(1994)を受賞しながらも、その余りに独特な内容と形態によって「はたしてこれは小説なのか?」と賛否両論を巻き起こした伝説の傑作。そのほか、著者の故郷・南会津を舞台にした関連作を「猫又」サーガとして初集成/初文庫化。
古今東西の博識を呼び込み、「言語」と「小説」そのものの謎を探究する室井光広の目眩くテクストによって、日本語文学は何を目指し、何を実現したのか。
遺作『エセ物語』へのイントロダクションともなる、まさに「室井入門」として最適な一冊。
今こそ、時代は室井光広に追いつくことができるか――?

【目次】
[本編]
猫又拾遺(1991)
あんにゃ(1992)
かなしがりや(1993)
おどるでく(1994)
大字哀野(1994)
和らげ(1996)(初書籍化作品)
[巻末資料]
単行本版あとがき(1994)
万葉仮名を論じて『フィネガンズ・ウェイク』に及ぶ(1994)
インタビュー 室井光広氏と語る(1995)

巻末エッセイ=多和田葉子「海に向かえ山に向かえ言葉に向かえ」
解題=川口好美

《あらゆる翻訳は最終的に原作の行間にただようおどるでくを読者の心底にうつすことを目的とするといっていいだろう。そのうつし方は、病気をうつすようにしてなされる。私は再度キリシタン版の中にうつし方の現場をさがしにゆく。おどるでくをうつされるのを好む人は何よりも「写す」行為をいやがらないと露文氏はいっている。》――表題作より

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Porco

11
読み終わるのに思ったより時間がかなりかかってしまった。架空の寒村猫又地方を舞台にした柳田的な民族学話に、(特に中編群で)話の重大なテーマとして各編に登場する古き書物たち。この書物に関しては作者が敬愛しているだけに非常にボルヘスを思い出させる筆致であるが、これに前述した民族学話が入り混じり唯一無二と言っていい奇妙な味わいが生まれている。2024/02/04

Ribes triste

10
不思議な味わいの物語たち。「猫又拾遺」の連作短編は、日本昔話を読んでいるのにボルヘスを読んでいる様な感覚。「あんにゃ」「かなしがりや」も染み入る。猫又という山間の地域の文化や感覚と人々との交流や縁の確かさとを読みながら皮膚で感じている。遠くに行ってしまった昭和時代を思うような。気づくと最後まで読んでいた。2023/08/11

kentaro mori

3
驚きのすばらしい大傑作!乗代雄介や大江健三郎を連想させる壮大な「エセ話」、書くこと・読むことの快楽。⚫︎書かれた内容よりもむしろその"書きかた"が限りなく重要であるような文書(刊行されたか否かを問わず)がこの世界には存在しているのではないか。⚫︎私は日記に書いたはずだ、理論ヨリモ実践ノ方ガ重要ダトイッテ安堵セズ、理論ノ殻ガヒビ割レル瞬間ヲ凝視シ、ソレカラ出テクルモノガオマエヲ親トミナスアリサマニ戦慄セヨ、と。2024/02/29

sugsyu

1
表層的にはごく典型的な私小説、屈折したインテリの自意識を、衒学を交えて語っているだけ、という第一印象は、読み進めるうちに反転する。あまりに過剰に配置された衒学的小話が、その配置の妙に輝きだし、平凡な日常から、前代未聞の迷宮じみた異世界へと誘い込まれる。誰にも似ないが、下手を承知で例えるなら文系の円城塔?なにせ表題作など、ロシア文字で書かれた誰かの日記、などという如何わしい呪物から口を切り、ソビエト収容所にカフカ、切支丹文書、詩経にまで行き惑う始末。とほうもない。2023/07/03

Lieu

0
表題作は、外国文字などの他者の形式を借りて内面を語る=アイデンティティを作るとき、そのアイデンティティは他者の刻印はあっても「他者」のそれから少しずつズレる…のようなことがテーマか。ロシア語のキリル文字も元をたどればギリシャ文字という他者の文字である。難解だが外国文学研究者がいかにも好きそうな作家だ。しかし田舎のインテリ、自殺というモチーフだけは共通するものの、リアリズムへの態度がほとんど正反対の室井光広と車谷長吉を読み比べると、現代における芥川賞と直木賞の違いがよくわかる。2023/08/10

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